テレビやスーパーでよく聞く牛肉の「A5ランク」はどういう意味なのか。焼肉作家の小関尚紀さんは「格付けは味のよし悪しを表しているものではない。最高級であることには変わりないが、人によってはA3のほうが好みだと感じることもある」という――。

※本稿は、小関尚紀『大人の「牛肉」教養』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

和牛のブロック
写真=iStock.com/Kohei Shinohara
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「A5ランク」は牛肉の美味しさの基準ではない

「本日は最高級A5ランクの○○牛を入荷しております!」

スーパーの精肉コーナーで、このようなマイクパフォーマンスを聞いたことはありませんか?

「A5ランク」と聞けば「とんでもなく美味しいお肉に違いない!」と、私たちは反射的に思ってしまいます。

実際、テレビ番組などでも「A5ランクは最高級の味だ」と紹介されることもあり、「A5ランク信仰」は世間にすっかり定着しているようです。

しかし、このA5ランク、じつは「美味しさの基準ではない」という衝撃の事実をご存じでしょうか。

牛肉の格付けはA~Cの3段階のアルファベットと1~5の5段階の数字を組み合わせた15個の区分で評価されます。このシステムは、1960年代前半に社団法人日本食肉協議会が、食肉の流通を合理化する目的で導入したものです。

つまり、A5ランクが流通上の意味合いで「最高級」であることに間違いはありませんが、必ずしも「最高級に美味しいお肉」を意味するわけではないのです。

あくまで流通業者が取引しやすくするための「単位」にすぎないわけですね。

アルファベットは「無駄なく肉が取れたか」の等級

詳しく見ていきましょう。

まずアルファベットの部分ですが、これを「歩留まり等級」と言います。

牛は、

枝肉:牛から内臓や四肢、頭や尾を取り除いた状態の肉
 ↓
部分肉:枝肉から骨や余分な脂肪を除いた状態の肉
 ↓
精肉:食べやすくカットされた食用の肉

という順序で食肉に加工されていきますが、歩留まり等級は、枝肉量に対する部分肉量の割合によって決定されるのです。

具体的な基準は、72%以上であればA、69%以上で72%未満であればB、69%未満であればCとなります。

つまり、最初のアルファベットは「その牛から無駄なく肉が取れるかどうか」という効率性を示しているだけであり、味の要素は一切加味されていないわけです。