ビジネスにつながるヒントは雑談の中にある

次にホウレンソウの上級編。ホウレンソウをさらに有効活用すれば、経営判断の大きな材料になる情報を部下から得ることもできる。

初級編では、「目の前の問題を解決する」という目的が明確で、引き出すべき情報もはっきりしているので、質問さえうまく投げかければよかった。

しかし、ビジネスにつながるヒントとなる情報は、ホウレンソウの「報告」から漏れやすい。なぜならそういった情報は、フォーマルな報告よりも、雑談の中に紛れ込むことが多いからだ。

私が実際に聞いた、ある上司と部下のやりとりを見てみよう。

「お帰り。今日は○○社の△△工場に行ってきたんだったな。どうだったね」
「課長、ただいま戻りました。ウチの製品、とても満足していただいているようです」
「それはよかった。しかし今日はずいぶん疲れた様子じゃないか」
「そうなんですよ。△△工場でちょうど、工事車両の出入りにぶつかってしまい、なかなか営業車を駐車場から出せなくてまいりました。おかげで戻りが予定より遅くなりすみません」
「おおがかりな工事が行われている様子だったのか?」
「あまり気をつけて見ていなかったので、何台くらいだったかわかりませんが……」
「もし生産設備の拡張なら、うちの製品の追加を売り込むチャンスだぞ」
「確かにそうですね。疲れていたので、どうせ補修工事だろうと気に留めていませんでした。明日にでももう1度訪問してみます」

調べてみたところ、新しい事業部が新製品の生産ラインを追加するための工事をしていることがわかった。さっそく営業活動をしたところ、これまでの納入実績が評価されて、すぐに採用が決まり、大幅に売り上げを伸ばすことができたという。

課長がもし声をかけていなければ、工事車両に関する情報は報告されなかっただろう。部下が、「報告するほどのことでもない」と思っていた事象の中に、ビジネスを左右する情報が隠されていたのだ。

「君のお陰で、売り上げを大幅に伸ばせたな。よくやったな」と、ねぎらいの言葉をかけるのを忘れずに。こういった経験を重ねれば、部下も気をつけて変化の予兆を探して報告するようになる。