部下に質問を投げかけて、意見や判断の根拠を明確にすべきだ。根拠となる事実が不確かであったり、本人の思い込みによるものであったり、自分の責任を回避するために情報を曲げて伝えているかもしれないからである。

この報告の中で、「客観的な事実」は「売り上げが落ちた」という部分だけだ。売り上げ減の原因は、部下の憶測にすぎない。上司は、「本当にライバル社のコミッションアップだけが原因なのか?」「ほかの原因は考えられないか?」と問いかけてみる。

経験を積んだ上司なら、「長年の付き合いがあるデパートなのに、他社がコミッションを上げたくらいで売り上げが落ちるはずがない」ということは何となくわかる。

だからといって、頭から「コミッションだけが原因なわけがない。ほかに原因があるんじゃないか。ちゃんと営業活動していたのか? 売り場担当者からの要望にきちんと応えられてなかったんじゃないのか?」などと問いつめるのはよくない。できるだけ部下本人が落ち着いて考えてから報告させることが重要だ。

上司が決めつけて判断してしまうと、部下はやる気をなくすし、「課題を解決し、状況を改善しよう」というモチベーションも下がってしまう。

「ちょっと待てよ。コミッションだけが原因なら、ほかのデパートでも売り上げが落ちてもおかしくないのに、落ちているのは○○デパートだけだな。ほかに何か原因は考えられないだろうか?」「売り場や担当者の様子に、何か変わったことはなかったか?」などと問いかけてみよう。

責任を追及して叱責するためではなく、「事実を知って対策をとることが目的」という姿勢を示すことが大切だ。厳しい口調で問い詰めると、部下は委縮し、ますます自分の責任を隠そうとするものだ。

「私が現場にいたころ、実はこんなことで売り場担当者の信頼を損ねることがあってね、売り上げが落ちてしまったことがあったんだ」などと、自分の失敗談をさりげなく披露するのもよいだろう。

こうしてじっくり聞けば、「実は最近、別のデパートの店内改装の対応が忙しく、○○デパートの訪問回数が減ってしまいました。その関係からか、いつの間にか、売り場の位置を変えられてしまいました」といった、「本当の原因」に関わる別の情報を報告してくれるはずだ。