消費者に刺さる新商品を生み出すにはどうすればいいか。国内最大級のシェアリングサービス・キャリーオン創業者の吉澤健仁氏は「顧客となってほしい人物像として“特定のある1人の姿”をイメージするといい。カルビーの『じゃがビー(Jagabee)』が成功した秘訣もそこにある」という――。

※本稿は、吉澤健仁『お金をかけずに売れる仕組み大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

食料品店の調味料の棚を見ている女性の後ろ姿
写真=iStock.com/PeopleImages
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「架空の理想顧客」を設定し解像度をアップ

自社の商品やサービスは、どのような顧客を対象にしているのか。ターゲットをはっきりと狙い定めるために大切なのが「ペルソナ設定」です。

ペルソナとは「自社の商品・サービスを使ってくれるであろう典型的なユーザー像」、すなわち「顧客のモデル像」です。このペルソナを具体化・明確化することで、顧客のニーズに沿った商品戦略・マーケティング戦略を進めることが可能になります。

そもそも、ターゲットとペルソナはどう違うのか。

ターゲットとは、だいたい性別や年齢層などざっくりとした顧客の属性を表すことが多いですが、ペルソナは、どういう暮らしをするどんな人物像に買ってほしいかというところまで、より具体的に絞り込んで考えます。

顧客を漠然とイメージするのではなく、具体的な特徴を持つ人物像として明確に設定するわけですね。

具体的なイメージができるほど、「こういう人物だったら、こういうものを求めるのでは?」「こういうことに困っているのでは?」と、顧客のニーズを深く考えられるようになるのです。

また、ペルソナ設定で顧客の人物像が鮮明になることで、商品開発やマーケティングに携わる人みんながイメージを共有しやすくなる、というメリットもあります。

ペルソナ設定のための「4つの視点」

ペルソナを設定する際には、「職業」「居住地」「性格」「趣味」「交友関係」など多岐にわたる項目について、解像度を上げて詳細に顧客像をイメージします。

と言っても、勝手な思いつきで決めていいわけではありません。顧客となってほしい人物像として、「特定のある1人の姿」が浮き彫りになるように考えていくのです。

方法としては、次のような4つの視点から掘り下げていくと、1人の人物としてイメージを固めながら、具体像を描いていくことができます。

①どんな属性か?
・性別 ・年齢 ・職業 ・収入 ・家族構成 ・居住地 など

②どんなパーソナリティー(個性・人柄)か?
・性格 ・価値観 ・口グセ ・悩み など

③どんなライフスタイル(生活の過ごし方)か?
・1日の過ごし方 ・趣味 ・交友関係 ・情報収集の方法
・よく使っている機器、デバイス など

④どのように自社の商品・サービスとかかわっているか?
・自社の商品やサービスを知るきっかけ、経路
・共感を抱くポイント
・購入を決める、妨げるポイント
・購入後に得られる効果や効用 など

イメージが強固になるほど、その「特定のある1人」が欲しくなるものを想起しやすくなります。

では、その商品・サービスを、どんな流通経路に乗せるのがいいのか。どんなメッセージを発することで、認知してもらいやすくなるのか。どうすれば満足度が上がるのか。どうすれば繰り返し使ってもらえるようになるのか。販売戦略として何をすればいいのかを具体的に詰めていきやすくなります。

より多くの人に売れるようにしたい。そのために「たった1人」をイメージすることは、一見逆説的に思えるかもしれません。しかし、そこに向けて具体的に考えることで、多くの人の心に刺さる商品を生み出すことができるのです。