仕事のタスクをついつい先延ばしにしてしまう人は多い。なぜなのか。発達特性のある人の就労支援に携わってきたキズキの林田絵美氏は「なかなかタスクが終わらない場合、いくつかの『トラップ』にハマっているかもしれない」という――。

※本稿は、林田絵美『自分に合った「働く」が見つかる 発達障害の人のための自分攻略法』(彩図社)の一部を再編集したものです。

アンハッピーな顔
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いつまでもタスクに手をつけられない「先延ばしトラップ」

いまはまだ集中できないから、やる気がみなぎってくるその瞬間まで待とう。

先延ばしをしてしまう人の中には、そんなふうに考える人が少なからずいるのではないでしょうか。

特に発達障害の傾向がある場合、「過集中モード」に入ると驚異的な集中力を発揮する人もいます。筆者も、この能力についつい期待してしまう人の気持ちはよくわかります。

しかし、この状態は自分の興味関心や緊急度に大きく左右されるため、「そのとき」がいつ来るのかを予測することは難しいです。その結果、いつまでも「そのとき」が訪れず、タスクが放置されてしまうことがあります。

また、発達障害の当事者の中には、興味があることとないことの差が激しい人も少なからずいます。興味がないタスクだから、先延ばししたい。そう思う気持ちはよくわかります。

そうした人でも、興味のないタスクに関心を持たざるを得ないときがやってきます。納期ギリギリになったときや、上司からタスクを催促されたときなど、追い詰められたタイミングです。状況が状況なだけに、やる気はみなぎるかもしれませんが、精神的なプレッシャーが大きくなりすぎたり、焦ってミスをしたりするといった悪影響が及ぶ可能性があります。

このような状況を回避するためにも、「いつかみなぎってくるやる気」に依存することなく、タスクを進められるような対策を考えていきましょう。

【攻略方法①】1個のタスクは「小さく始められる」単位で考える

先延ばしの根本的な要因の1つは、タスクの量や難易度に圧倒され、行動を始めるための具体的なイメージが湧かないことです。「どこから手をつければいいのかわからない」といった漠然とした不安感が、行動を妨げているわけです。

これは“やる気がない”というより、「やる未来が想像できないにもかかわらず、やらなければいけない現状に直面し、思考停止している」に近い感覚です。ならば、漠然とした不安感を最小限にすることができれば、「タスクに着手しなければ」という心理的負荷も、軽減することができるはずです。

漠然とした不安を小さくするには、「小さく始められるタスク」から手をつけることが効果的です。

小さく始められるタスクとは、すぐにとりかかれる、1回で完了可能なタスクのことです。

まずは図表1のようにタスクを分割してみてください。どのタスクから手をつければいいか、イメージしやすくなるはずです。