仕事中でミスが絶えない人はどうしたらよいのか。特性のある人の就労支援に携わりながら、自身の発達障害とも向き合うキズキの林田絵美氏は「“注意”に目を向けることで、不注意を減らすことができる」という――。

※本稿は、林田絵美『自分に合った「働く」が見つかる 発達障害の人のための自分攻略法』(彩図社)の一部を再編集したものです。

林田絵美さん
筆者提供
林田絵美さん

注意とは選び取る力である

資料の添付忘れ、スケジュールの入力ミス、指示の読み間違えなど、自分は真剣に取り組んでいたはずだったのに、何かが抜けていたり、何かを間違えていたりする。このような「不注意」、つまりは「ケアレスミス」に悩む方は、読者の皆様にも多いのではないでしょうか。

どうすれば、不注意を減らすことができるのでしょうか?

著者が非常に重要だと考えるのは、「そもそも注意とは何か?」から理解することです。なぜなら、不注意とは「注意の偏り」や「注意の不足」で起こる現象だからです。

私たちは日々、膨大な情報に囲まれています。すべてを等しく処理することは不可能なので、脳は「何に注目し、何を無視するか」を選びながらはたらいています。この“選び取る”はたらきが「注意」です。

私たちが日常生活や仕事で何かに取り組むとき、脳の中ではいろいろな種類の注意が複雑にはたらいて、情報を選び取っています。

例えば、会議資料を作っているときに、チャット通知の音が鳴ったとします。そのとき「反射的にそちらに目を向ける」人もいれば、「無視して作業を続けられる」人もいます。この違いは、注意の向け方やコントロールの仕方に、各人で違いがあるために生じます。

人間が持つ注意の4タイプ

注意のタイプには、主に次の4つがあります。心理学の分野では、それぞれのはたらきを「持続的注意」「選択的注意」「分割的注意」「転換性注意」と分類します。ここではよりイメージしやすいように、以下のような言葉に置き換えています。

注意の維持(=持続的注意)
注意の取捨選択(=選択的注意)
注意の分割(=分割的注意)
注意の切り替え(=転換性注意)

これら4つの注意の特徴を理解すれば、対策を練ることができるようになります。どれか1つの注意が原因でケアレスミスが生じることもあれば、4つのうち複数が原因となってケアレスミスが生じることもあります。そうしたケアレスミスに対処する術を、ご紹介します。