「事実に即した話題」は主張を地に足つかせる

氏のまとめは、次のようなものだった。

(1) 20世紀的な報酬、ビジネスで当然のものだとみんなが思っている動機付けは、機能はするが驚くほど狭い範囲の状況にしか合わない。

(2)「If Then」式の報酬は、時にクリエイティビティを損なう。

(3) 高いパフォーマンスの秘訣は報酬と罰ではなく、見えない内的な意欲にある。

科学知識とビジネスの慣行の間のミスマッチを正し、21世紀的な動機付けを採用すれば、私たちは会社を強くし、多くのロウソクの問題を解き、おそらくは世界を変えることができる――。

聞き手は、「印象的な場面」と「話の最後」を記憶していることが多い。最初の印象的な“ロウソク”の場面と、それを“現実社会でのロウソクの問題”(創造性と感性で解決が必要な仕事)を結び付けて結論とし、最初に戻る形で話を包みあげたことで、聞き手の興味を引き記憶を促している。さらには現実世界の実例を「証拠」としてあげたことで、実験の結果や主張だけでなく、私たちの“現実”としてより身近に感じられる内容に仕上げている。

「聞き手は、大げさな主題にではなく、それらをしっかり地につかせる事実に即した話題に興味を持つ」(*3)とデール・カーネギーも記している。ときには、こんな論証のような話の展開と、事実に即した話題(証拠)も、聞き手の興味をかき立てることもできるのだ。

[参考資料]
TED
*1 1945年カール・ドゥンカが考案した行動科学の実験
Duncker, Karl (1945) On Problem Solving, Psychological Monographs, 58, American Psychological Association
*2 1962年サム・グラックスバーグの実験
Glucksberg, S. (1962). "The influence of strength of drive on functional fixedness and perceptual recognition". Journal of Experimental Psychology 63: 36–41.
*3 Dale Carnegie, [1991]The Quick and Easy Way to Effective Speaking, Reissue,.
『心を動かす話し方』(デール・カーネギー著、山本悠紀子監修、田中融二訳 2006年 ダイヤモンド社)

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