長期目線でルール化するか、ショック療法か

前述の3つの事例のように、従来の経営や事業の方向性を変えようとすると、たちまち不文律が顔をのぞかせ邪魔をしようとする。では、変化の障害となる不文律に対してどう対処すればよいのか。

まず組織の中にどんな不文律が存在しているのかを洗い出す。会社や部門の不文律をみんなで徹底的に出し合ってみるのだ。トップが「責任は問わないから挑戦しろ」と号令をかけ、新しいプロジェクトをやってみた人が失敗して左遷されたとか、それこそホワイトボードが何枚あっても足りないくらい出てくるだろう。

次にそれらの不文律の中からどれにフォーカスするかを決める。絞り方のポイントは自分たちの部門の競争力を決定づけている活動だ。

当社の例で説明しよう。私たちは約120社の人材開発をお手伝いしているが、パッケージで売っているわけではないので、スタッフが集まって会社ごとのベストプラクティスを話し合い、知恵を出し合うのがコア活動である。が、「ヒアリングが不十分なときは相談してはいけない」という不文律があったので、なかなか議論が活発化しなかった。

こうしたケースでは、関係者で集まり、「これがうちのコア活動だ」「知恵を出し合う作業は強化したい」といった形で確認し合う。そして「でも、この不文律が阻害している」「なら、ヒアリングが完璧でなくても相談できるようにしよう」と結論を出す。

具体的に不文律を消していくプロセスにおいては、不文律を別のルールに変えたり、研修を行う必要性が出てくる。先のC社の例で言うと、女性活用を口で言うだけでなく、女性管理職の割合をはっきり決めるとか、特定のプロジェクトのリーダーは女性を登用するといった具合に成文化しルール化する。加えて、女性活用に積極的でない言動を顕わにしている幹部社員に対しては研修で意識改革を図っていくのだ。

ルール化と研修による意識改革は不文律をなくすための王道だ。ただしこれは漢方薬のように、ある程度、時間のかかる方法である。