部下がかわいくて仕方ない
もうひとつのターニングポイントは、2007年、横浜支店広域営業1課の課長に就任した時にやってきた。
津田さんにとって初めての課長職だっただけなく、横浜支店にとっても初の女性営業課長の就任であった。またしても、不安爆発だったのかと思いきや……。
「いやー、部下の若い社員たちの顔を見た瞬間、ああ、この子らを預かるんやと思って、もう、かわいくてかわいくて愛が溢れましたね」
なんだか、直轄プロジェクトの時とは様子が違う。
横浜支店広域営業1課はスーパーなどの量販店の本部を得意先とするチームだったが、津田さんはこの仕事を通して、自身が結果にすさまじく執着する人間であることに気づかされたという。
「結果にこだわるあまり、当時の部下には辛い思いをさせてしまったかもしれません。でも、営業は結果を出すのが当たり前。そのためにできる事はすべてやるというのが、私のスタンスでした」
だから、部下が商談に持っていく資料を整えていなかったら、完璧に整うまで徹底的に一緒にやり直した。商談の際は、目標を達成するまで提案を続けるなど、攻めて攻めて攻めまくった。
そんなことをしたら、部下の心が離れてしまわないか心配になるが……。
「たしかに、部下に対して厳しかったと思いますけれど、飲み会や1対1の面談も含めて、コミュニケーションをむちゃくちゃ取っていました。ですから、一方的に結果だけを要求されて反論は許されないという受け取り方はされていなかったと思います。結果を出すために、お互い精一杯やろうよという関係です。オンとオフの切り替えをはっきりして、厳しいけれど楽しいチームを目指したつもりです」
チームを預かる経験は格別
この横浜支店時代の経験から、津田さんは自身の職業人としてのタイプを深く認識するようになったという。言葉で定義すれば、以下のようになるだろうか。
結果に執着するのは、自身の業績や出世のためではなく、目標を達成する喜びを味わいたいからこそ。そして目標は高ければ高いほど、達成の喜びも大きくなる。
「私、新任課長に対して必ず言うことがあるんです。初めて課長になったときのメンバーは絶対に忘れませんよ、いろいろなリーダーを経験すると思うけれど、チームを預かる経験は格別ですよって。彼、彼女らを成長させてあげるのも、結果を出させてあげるのもマネジャー次第ですから、チームを預かるということはメンバーの未来を預かるということなんです」