もはや従来の営業手法は完全にゆき詰まりを見せているが、成熟市場において、売り上げを伸ばす方法はないのだろうか。

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顧客の断り文句(例)

大切なのは、「案件」ではなく「顧客」を見るという発想だろう。成長市場では、目の前の果実(案件)を刈り取っても森はなくならなかった。しかし市場が成熟したいま、目先の果実を刈り取るだけでは荒れ地が広がり、いずれ収穫がなくなっていく。それを避けるには、自ら土地を耕し、種をまいて、果実を毎年実らせてくれる木(ロイヤルカスタマー)を育てていくしかない。

「刈り取り型」営業から「種まき型」営業への転換が求められているのだ。

じつは種まき型営業の重要性は、これまでもしばしば語られてきた。とくに刈り取り型の限界が見え始めた10年ほど前からは、「種まきをしよう」とスローガンを掲げて改革を進めている営業部門が増えている。その点では一歩前進といえるだろう。

ただ、現実は甘くない。種まき型営業へのシフトを掲げつつも、中途半端に終わっている組織が非常に多いのだ。

よく見かけるのが、種まきと刈り取りをその場しのぎで繰り返す「カスタネット営業」だ。

売り上げが落ち始めると、営業マネージャーは「種まきをしていないからだ」と反省して、慌てて種まきを始める。結果が出始めると、こんどは刈り取りに夢中になって種まきをサボる。しかし、刈り取りがひととおり終わったころには荒れ地になっていて、また慌てて種をまく。これでは一度叩いたら一拍休みを繰り返すカスタネットのように、営業成績のいいときと悪いときの差が激しくなってしまう。