そのグリーフにどんな意味があるのかを考える

【澤円】「⑤再生期」について、もう少し深掘りさせてください。強い悲しみや絶望から立ち直って新しい一歩を踏み出すには、どのような行動や考え方が必要になるでしょう。

【中島輝】ヴィクトール・フランクルというオーストリアの心理学者が提唱した、「逆説志向」というものが有効だと思います。逆説志向とは、本人が不安や恐れを感じることを、自ら積極的に望んだり行ったりすることを意味します。

強いグリーフに襲われたとき、人間は悩み苦しみます。でも、逆に考えれば、「グリーフに悩み苦しむからこそ人間だ」ともいえますよね? ですから、グリーフが訪れたときは、そこから逃げるのではなく、あえて悩み苦しむのです。

そうして悩み苦しむうち、例えば「ペットの死は、自分にどのような意味があったのだろう?」「これから生きていくうえで、なにか大切なことを教えてくれたのではないか?」といったように、ペットの死というネガティブな出来事にあるポジティブな側面に目を向けられるようになり、立ち直っていけるのです。

【澤円】確かに、「身近な人やペットの死」といったものがなければ、日常のなかで死について深く考えることはあまりありませんからね。

写真=石塚雅人
澤円さん

【中島輝】愛する人やペットが亡くなったという事実は、言葉では言い表せないほど悲しいことでしょう。でも、いくら自分を責めたり後悔したりしてもその事実を変えることはできません。そういった悲しい出来事が、自分に与えてくれた意味を考えるきっかけとしてほしいと思います。

(構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹)
関連記事
【第1回】「会社に行きたくない」と感じたら要注意…真面目な人ほど心を病む「ストレス以上、うつ病未満」の重大リスク
「何のために生きているかわからない」天涯孤独の40代相談者にカウンセラーが勧めた「意外な日課」
お金がなくても楽しそうな人の秘密…和田秀樹「60歳でメンタルがヨボヨボになる人、幸せになる人の違い」
ベンチャー社長の時よりも幸福に生きている…がんと5回闘い、打ち勝った53歳が行き着いた"本当の幸せ"
6年間、失明したことを隠していた…「自分は障害者じゃないと思いたかった」全盲の医師がたどり着いた境地