メンタル不調になりやすいきっかけは何か。心理カウンセラーの中島輝さんは「大切な家族やペットを失った時に『深い悲しみ(グリーフ)』に陥る人は多い。最近では日常の些細な変化に絶望を感じ、メンタル不調になる人も増えている」という。元日本マイクロソフト執行役員の澤円さんとの対談をお届けする――。

※本稿は、マイナビ健康経営のYouTubeチャンネル「Bring.」の動画「大切な人やペットの死、離婚、突然の解雇…。深い悲しみから立ち直るために知っておきたい5ステップ」の内容を抜粋し、再編集したものです。

「グリーフ」が訪れるタイミングは死別に限らない

【澤円】「グリーフケア」という言葉に馴染みがないという人も多いかと思います。まずは、そもそもグリーフケアとはなにか、その概要を教えてください。

【中島輝】「グリーフ(grief)」は、「悲嘆」という意味を表す英単語です。一般的には、大切な人を失ったときに訪れる、悲しみをも超える深い悲嘆を指します。そうしたグリーフに陥った人に対するメンタルケアのことを、グリーフケアと呼ぶのです。

ただ、グリーフが訪れるタイミングは、死別に限らないとわたしは考えています。わたしはグリーフの定義を広く考えているのですが、ペットとの別れもグリーフのきっかけになり得るものですし、他にも、離婚や恋人との別れ、リストラによる失業、大切にしていたものを失ったことなどもグリーフに陥るきっかけになるでしょう。

ペットをなでる人
写真=iStock.com/Solovyova
※写真はイメージです

それだけでなく、親や自分自身が大病を患ってしまったとか、転職先が期待していたような会社ではなかったときだって大きな悲しみを感じることがありますよね。

高齢化で高まるグリーフケアの重要性

【澤円】そのグリーフケアに、中島さんが着目したきっかけはあったのですか?

【中島輝】わたしが「グリーフケア心理カウンセラー講座」を始めたのは、約8年前に遡ります。そのきっかけは、社会の高齢化が進んできたことでした。高齢者が増えれば、死別に直面する人が必然的に増えますし、それ以前にも親が認知症になったことなどがきっかけで、グリーフに悩む人が増えてきていると感じていたのです。社会の高齢化はこれからさらに進んでいきますから、グリーフケアのニーズや重要性は、今後ますます高まると見ています。