親や子供、恋人、友人……かけがえのない存在を亡くし喪失感にさいなまれることがある。関西学院大学悲嘆と死別の研究センター長の坂口幸弘さん、客員研究員の赤田ちづるさんが死別の悲しみに直面した人へのヒアリングや多くの文献・体験談を通じて、つらい時期を過ごすためのヒントを紹介する――。

※本稿は、坂口幸弘、赤田ちづる『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

ベッドのふちに力なく座っている男性の後ろ姿
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悲しみのうずのなかで

大切な人と死別したばかりのあなたはもう会えないことが信じられなくひとりで苦しんでいるかもしれません。

心細く、いつまでも夜が続くかのように感じている人もいるでしょう。

そのようなとき、私どももかける言葉が見つからず、ただ隣に座って、心を寄せることしかできないことがよくあります。今は悲しむだけ悲しんでいい、大切な人を想う時間を大事にしてほしい、そう思っています。

悲しみは人それぞれ悲しみとの向き合い方に正解はない

死別の悲しみには個人差が大きく、その想いや程度は人によって本当にさまざまです。うまく言葉にできない感情に胸が締めつけられ、心が押しつぶされるように感じる人もいます。

一方で、目の前の現実を受けとめきれず、何も感じないような感覚となり、涙も出ないこともあります。悲しみ方に正解があるわけではありません。

同じような経験をしたからといって、抱える感情はみな同じではないのです。あなたの悲しみはあなただけの悲しみであり、ほかの人には十分に理解されないかもしれません。

母親を肺がんで亡くした60代の男性は、死別から半年がたった頃、さみしそうにこう話してくれました。

「周囲の人が、母の死を大往生だったね、寿命をまっとうしたねと言うんです。母は92歳でした。周囲の人が大往生だと思っても、私にはどうしてもそうは思えないのです。私にとっては、たったひとりの母でしたから」

家族の中でも、悲しみの大きさや表現、向き合い方は違います。ある50代の女性です。妹さんの態度をこころよく思っていないようで、次のよう打ち明けられました。

「母が亡くなってしまったのに、どうして妹は平気そうで、今までと変わらない生活をしているのでしょうか。母は死んでしまって、もういないのに……。妹と母の話をしたり、一緒に泣いたりしたいと思っていたけれど、全然できなくて……。妹のほうが母にかわいがられて育ってきたのに、薄情だと思いませんか?」

姉妹で気持ちを共有できないことが、この女性の悲しみをさらに深めているようでした。

同じ家族のメンバーであったとしても、各々にそれぞれの想いがあります。

「家族だからみんな一緒」とは考えないほうがいいと思います。ほかの人と違ったり、理解されなかったりしたとしても、自分の気持ちを大事にしましょう。一人ひとりの感情や想いに優劣はありません。みずからの悲しみを、あなた自身が認めてあげることが大切なのだと思います。