ネット上での反応が大きかったのはアジアだった。日本のアイドルがSGを好んで着ていることがクチコミで広がり、「メード・イン・ジャパン」への憧れも手伝って、フェイスブックのファン数が爆発的に増えていった。SGは10年9月に2号店をシンガポールにオープンさせている。まだ代官山に1店しかない段階での海外進出だった。佐藤社長はいう。

「我々は『インターネットでブランドをつくる』ということにチャレンジしています。まだ成功例はないはずです。グローバルに拡がるネットの世界では先行者利益がきわめて大きい。成功した企業の後追いでは絶対に勝てない」

事業としてのSGは「まだ投資段階」(佐藤社長)で、現状では広告代理業で得た利益を、アパレル事業に投資している。これからどのように収益化させるかが課題だ。アジアでの人気は高いが、多くの国では電子決済や物流システムが未整備で、ビジネスを成長させづらい。佐藤社長は、「あと2年もすれば、環境は大きく変わるはず」としたうえで、「収益化には焦っていない」と話した。

「我々はフェイスブックから大きなチャンスをもらいました。日本ではすぐに収益が問題視されますが、アメリカのIT企業はどこも後からマネタイズ(収益化)の方法を考える。フェイスブックがそうしたように、すぐに収益化を図るのではなく、できるだけファンを増やすことに注力したい。そうした成功モデルをつくりたい」

前回のローソン(http://president.jp/articles/-/8805)と今回のSGは、トップ自らがソーシャルメディアへ積極的に関わろうとしている点で共通している。顧客との距離が近いため、トップの理解と共感がなければ、派手な展開は仕掛けづらい。ソーシャルメディアのリスクを操り、メリットを享受するには、その組織の柔軟さが問われることになる。

(遠藤素子=撮影)
関連記事
なぜ不況でも10万円の靴が売れるのか
ルイ・ヴィトンと無印とカレーの共通点
33万円の日本酒、20万円のお茶が売れる理由
第2のユニクロを生む「共感マーケティング」入門
売れない時代にブランドをどう見直すべきか