「このままでは百貨店に未来はないが、GMSには再生の余地がある」小売り・流通改革のプロが、総合スーパーの衣料品部門を例に取り、マーケティングセオリーに則った改革案を紹介する。
「総合」衣料品店で服が売れない!3つの理由
日本全体で衣料品が売れなくなっている。中でも最も落ち込みが激しいのが百貨店とGMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア=総合スーパー)。いずれも総合と名のつく業態だ。
不調の原因には、絶対的な消費人口の減少やデフレに加えて、消費者が衣料品を購入する際のチャネルが多様化していることがある。
多様化するチャネルの第一が、インターネットショッピングの普及だ。インターネットは、ファッションにおける地理的な制約を取り払ってしまった。いまや日本のどこにいても、ワンクリックでギャップやアバクロンビー&フィッチの商品が自宅に届けられる。メディアで紹介される流行の服が、地方に住む人たちも容易に手に入れられるようになったのだ。
第二に、ユニクロ、ニトリ、しまむらなどに象徴されるSPA型、つまり企画製造販売型の専門ブランドビジネスの台頭が挙げられる。こうした業態では、店頭で販売情報を把握し、即素材の調達~加工~製品化に反映できることから、品質のいい商品を大量に安く販売できるのみならず、流行やニーズの変化にも柔軟に対応できる。
このような業態が消費者に浸透した結果、「1枚1万円のブラウスを買うより、3000円でそこそこオシャレな商品を買い、残りのお金は他の消費か貯蓄に回す」という志向が支配的になった。つまり消費者は、「こだわるときは徹底してこだわるが、こだわらないときは徹底してこだわらない」という合理的な判断をするようになってきたのである。
市場の縮小に加え、新たな業態が台頭したことで「高かろう、良かろう」の代名詞だった百貨店は瀕死の状態に追い込まれ、「安かろう、悪かろう」の代名詞だったGMSでも衣料品は売れなくなった。これが現在の不振の図式だ。百貨店やGMSが従来から提供してきた価値軸の延長線上では、何をやっても駄目という状況になっているのである。