脱低価格競争!自社の優位性をどのように生かすか

GMS衣料品におけるブランドマーケティングはどう考えるべきか。

まずは消費者が「GMSで買ってもいい」という商品を丹念に見つけ出すことだ。そして、商品ごとに、この商品は専門店で、この商品はGMSで買うといった「棲み分け」を提案し、競合品との共存共栄を目指す。つまり、「晴れ着は高感度品がよいが、普段着はGMSで十分」という価値観を、広告宣伝を利用して消費者に浸透させ、GMSならではの新たな価値軸を確立する。ここが第一歩となる。

ある調査によると、下着類、靴下などの日用衣料品や、バス・トイレタリー用品などについては「有名ブランドのものを買う必要はない」と回答する消費者が多かったという。こうした商品に関してはファッション感度が高い層も同様の回答をしている。

もともとGMSのビジネスモデルは「コモディティ型」である。つまり、商品を大量に調達し、可能な限り低価格で販売するというビジネスモデルだ。このことは、GMSの売り上げの6割近くが食料品、生活関連品を含めれば8割がコモディティ品で占められていることを見れば明らかである。先に述べたように、消費者の生活との密着度が高いGMSは、この分野に優位性がある。

このように書くと、GMSはコモディティ品に特化していればいいのではないかと考える人もいるだろう。しかし、特徴のないコモディティ品をただ安く売っていては、低価格競争に巻き込まれるだけだ。他社と差別化し、生き残るには新たな価値観の提案が不可欠なのだ。

1990年代後半にユニクロが大躍進を遂げたとき、ユニクロからは「衣料品は部品(パーツ)である」という、従来のファッション愛好者に対して強烈なメッセージ、いわば着こなしへの新しい提案があった。

ユニクロは、バブル崩壊後の日本人に、ファッションに必要以上のお金をかけることのカッコ悪さを説き、一般消費者をCMに起用して「服とは暮らしの消耗品である。気負わず心地よく着られることが大切だ。空腹になったらコンビニにお弁当を買いにいくように、気軽に手に入れればいい」という新たな価値観をPRしていった。

消費者は、ユニクロが提案するライフスタイルに共感し、結果として多くのファンを生み出したのである。ユニクロの成功は、新しい価値観を高度なマーケティングと流通改革で浸透させたことにある。

これに対して、現在のGMSの衣料品分野には「新たな価値観の提案」も「着こなしの提案」もない。ユニクロのヒートテックが当たったからと「ヒートファクト」(イオン)、「パワーウォーム」(イトーヨーカドー)、「エコヒート」(西友)のように追従したプライベートブランドを発売したり、1000円デニムに対抗して980円のデニムを発売したりと、売れそうなものを安く販売しているだけだ。これでは自社のファンをつくることなどできない。消費者は、ファーストムーバーなのかフォロワーなのかを冷静に観察しているのである。