「棲み分け」と「共存共栄」のメッセージが消費者に浸透すれば、結果的に高感度層の顧客を取り込むことも可能になり、市場は拡大する。このように段階を踏んで「必需品=GMSでいい」というステージから「必欲品=GMSがいい」というステージへのステップアップを狙うべきだ。

ユニクロは、最近でこそジル・サンダーと提携したりセオリーを買収したりしているが、値段のわりに高品質という創業以来のコンセプトは守り抜いていることに注目したい。メッセージの一貫性がユニクロのブランディングを確固たるものにしたのだ。キーワードは、「メッセージの一貫性」と「いま支持されている領域からの段階的拡大」である。

衣料品は必需品でありながら嗜好品でもあるという特徴を持っている。そして、嗜好品は必欲品へと転化する可能性を秘めている。消費者はどうしても欲しい商品があれば、食費を節約して浮いたお金から衣料品を買うこともあるだろう。そうなれば、衣料品は従来の市場規模を超えたポテンシャルを持つことになる。ユニクロのヒートテックのようなヒット商品を生むことで、財布の中のシェアを奪うことができるわけだ。

GMSの衣料品部門担当者は「自分たちは顧客に対してどんな価値を提供しているのか」「他社と何が違うのか」という議論を徹底して行うべきだ。議論を重ねることで、自社しか提供しえないブランドの顔が明確になってくるはずである。

先に述べたように、GMSには「徹底したローコストオペレーション」と「消費者の生活と密着した店舗」という他の業態にはない強みがある。この強みを最大限に生かすためにターゲット分析を徹底し、お客様目線の商品開発と売り場構築ができれば、大きな収益を生むビジネスモデルをつくることができる。

いまこそ、自社が提供できる価値とは何かを明確にし、新しい生活様式の提案を消費者に行うべきだ。再生の手がかりはここにある。

(構成=梅澤 聡)