「知的購買層の仲間入り」というメッセージ

GMSの衣料品部門再生にあたっては、「(1)必需品の高付加価値化」→「(2)必欲品への転換」という2つのステップを踏むことが有効だ。

最初に、顧客の声を聞くことで「GMSで買ってもいい」と消費者が感じる商品(必需品)を見つけ出す。分析にはちょっとしたコツが必要だ。衣料品と一括りにせず、着用場面、目的、スタイルなどと細かく分解する。

そして、顧客が求める機能性や着心地、旬のディテール、加工感、カラーバリエーションなどを徹底的に分析するのだ。たとえば「自宅で洗濯しても型崩れしないコート」「爪先が破れないソックス」「暖かい下着」のような機能性に加えて、着心地や風合いといった生産仕様に直結する商品開発力も問われることになる。

次のステージでは、「GMSで買ってもいい」と顧客が感じている商品群の付加価値を、消費者に伝えることが主眼となる。すなわち新たなライフスタイルの提案だ。

ライフスタイルを提案するからといって、この段階でファッション感度の高い商品への転換を図ろうなどと色気を出してはいけない。実際にはありえないライフスタイルを提案するより、顧客が「GMSでもいい」と思っている商品に磨きをかけることだ。そのうえで、消費者が晴れの日に着る高感度品と、普段着にする自社商品との共存共栄をライフスタイルとして提案する。つまり、「他社の商品と私たちの商品を組み合わせれば、あなたも知的購買層の仲間入りですよ」というメッセージを送るのだ。