百貨店とは、そもそも高級品やラグジュアリーブランドを扱う、比較的富裕層向けの業態だ。一昔前は、「ちょっといいお洋服でも買いましょう」となると、百貨店に行く以外の選択肢はほとんどなかった。しかし、そのうちショッピングセンターやファッションビルや駅ビルなど、百貨店以外で服が買える選択肢が増えた。都心から車で1時間以上走らなくてはならない郊外につくられたアウトレットモールも、今や連日大盛況だ。さらに、不況が長引くにつれ、一世帯あたりの被服費はどんどん削られている。そこに現れた、ユニクロやH&Mといったいわゆるファストファッション。生産がグローバル化することにより、「安くても品質の良い物」が誰でも手に入る。国民のファッションのカジュアル化が進み、フォーマルなイメージの強い百貨店の商品は、若者のニーズに合わなくなってきている。
矢野経済研究所・ファッション事業部・主席研究員の松井和之は百貨店業界の苦境をこう分析する。
「百貨店のビジネスモデルは、駅から徒歩1分などの都市の超一等地で成立しています。そのため売り場を増床、拡大することは容易ではなく、経営資源を『売り場レベルのリニューアル』に投入することが多い。一方、スーパーやショッピングセンターは駅前や工場の跡地で多少利便性が劣っていても開発が可能です。11年まで右肩下がりを百貨店が続けたのも、そうした百貨店業界が抱える構造的な問題が原因です」