店舗とネットの「行き来」が生み出す価値
「ららぽーとクローゼット」を運営する三井不動産は、オフィスビルや商業施設、ホテル、リゾートなどを手掛ける総合デベロッパーだ。BtoB事業が基本であり、ららぽーとなどの商業施設事業では、テナント企業に入居してもらうことで賃料を得ている。
そんなデベロッパーが、なぜ自ら「ららぽーとクローゼット」というBtoCの領域に携わり、「アンドモール」というECを運営するのだろうか。それは、商業施設の開発運営者として、テナント企業を支援するためだ。
ららぽーとクローゼットは、店舗での体験料金も収入になるものの、そもそもの目的はテナント企業の売り上げ向上と、ららぽーとへの集客、施設の魅力アップにある。ショッピング体験をエンターテインメントとしてうまく「オムニチャネル化」しているのだ。
ユニクロも、ウォルマートも、そして三井不動産も、「カスタマーセントリック」の考え方で顧客とデジタルでつながっている。顧客の利便性を高めて、リアルとデジタル相互の行き来により売り上げを高める方法論としてオムニチャネルを選択した。
ナイキの場合は顧客のニーズに目線を向けず「D2C」に特化し、ECでの販売に注力しすぎた。そのため、小売店舗にナイキ商品がないことで顧客の「ショールーミング」が成り立たなくなったのに加えて、ウェブで興味を持ち小売店舗で購入する「ウェブルーミング」の流れもうまく捉えられなかった。筆者は改めて、この両面が失敗の理由と考える。
翻って日本について考えると、小売店舗で商品を確認しながら購入はウェブで行う消費者行動を、店舗運営を主体とする企業はあまり快く思わないと言われてきた。それは、ショールーミングという行動パターンをあくまでECでの売り上げに特化したものと捉え、店舗の売り上げとECの売り上げを分けて考えるからだろう。おそらくは評価制度もその考えに基づいていると思われるが、今後は例えば店舗からECに送り出した数を店舗側の成績とするなど評価体系自体も再検討することが必要になってくるのではないか。