ユニクロの成功要因は「リアルとデジタルの融合」

ユニクロは多様なアプローチでオムニチャネルに取り組んでいる。例えば、ウェブ限定商品を多数用意し、店舗内に案内を表示してECサイトへの誘導を図っている。反対にECサイトで購入した商品も店舗での受け取りや返品が可能。このほか、SNSを活用した情報発信などにも力を入れており、店舗、EC、SNSを融合させたオムニチャネルを推進してきた。

顧客の視点に立って、購入はもちろん検討段階から「リアル/デジタル」、「オンライン/オフライン」を自在に選べるようにしたことが、ユニクロのデジタル化成功の要因となっている。

UNIQLOのロゴ
写真=iStock.com/carterdayne
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また、「カスタマーセントリック」の重視によってデジタル化を成功させた例としては、小売り世界最大手のウォルマートの事例が挙げられる。〈なぜウォルマートは5000億円以上を「広告」で稼げるのか…日本の小売業が誤解する「リテールメディア」の本質〉の記事でも紹介したが、社員教育やDXにも取り組み、全社をあげて「カスタマーセントリック」を目指した点は大きい。

「デジタル化」という点だけで見れば、ナイキもD2Cによって推し進めたものの、成功しなかった。対してユニクロ、ウォルマートの両社がとったデジタル化の考え方と施策が、ナイキがどうすればよかったのかという問いへの明確な回答になっていると筆者は考える。

ショッピングは急速に「進化」している

そもそも現在、スマートフォンやSNSの浸透、ライフスタイルの変化によって、消費者の行動パターンは大きく進化している。

消費者がある商品を購入したとする。その際、消費者はどのような方法で商品をリサーチしたのか。商品を店舗で買ったのか、ECで買ったのか。その商品を自宅で、対面で受け取ったのか、宅配ボックスで受け取ったのか、あるいは店舗やコンビニで受け取ったのか。さまざまなパターンが考えられる。

まず検討と購入のフェーズを見ていくと、「オンラインでリサーチしてオンラインで購入した」「オンラインでリサーチして店舗で購入した」「店舗でリサーチして店舗で購入した」「店舗でリサーチしてオンラインで購入した」という行動パターンがある。もちろんそれ以外の雑誌や広告といったメディアで調べ、購入に至るケースもあるが、大きく分ければこの4つだ。

【図表】「検討×購入×受取」の3Dポジショニングマップ
筆者作成

そこに上述の多様な受け取り方法を加えて考えるのが、現在のデジタル化が進んだ小売りにおいてとるべき方法だろう。そして、検討も購入もリアルワールドとデジタルワールドの双方で柔軟に行える環境を用意し、受け取りにも多彩な選択肢を提供することが、小売りにおける「オムニチャネル」の本質であり、生命線だと筆者は考える。なぜなら、消費者はすでにこのような臨機応変の検討・購入・受け取りのスタイルを始めているからだ。