どんな手を使っても敵対者を追いつめる

エリックは、中国が国家の敵とみなした人々の情報をどのように収集し、彼らを本国に帰国させて訴追するためにどのような手口を使っているのかを明らかにした。

時には手の込んだストーリー(架空の話)を作り、ある時は不動産会社の幹部として、あるいは「自分も中国共産党が嫌いで自由のために戦っている」などと反CCPの闘士を装ったりして批判者に近づき、彼らの信頼を得てから強制的に本国へ送還する。

その際、スパイにはアメとムチを含めあらゆる手を使うことが認められているという。エリックはそれ以上の詳細は語らなかったが、「彼らからは、何をしてもいい、と言われていた」ということははっきりと述べた。

MPSの目的は中国共産党の地位を守り、内外での党の支配を維持することだが、2012年に習近平氏が指導者に就任して以来、中国の諜報機関は再編成され、MPSの活動も強化された。

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しかし、オーストラリアの法律では外国の諜報機関が国内の外国人を脅迫したり、帰国を強制したりすることは犯罪となるため、MPSの活動は豪中間の外交問題にも発展している

ABCの番組によれば、2015年に中国の秘密警察2人がメルボルンの中国人バス運転手を拉致し、本国へ送還したが、この事件が公表されると、オーストラリア政府が抗議し、中国側は「二度と起こさない」と約束した。しかし、その後も2019年に中国将校がオーストラリア在住の59歳の中国人男性を強制帰国させるなど、事件は繰り返されているという。

中国政府の“最も闇の部分”

エリックは番組で、「真実を暴露するために声を上げている」と語り、こう続けた。

「国民には“秘密の世界”について知る権利があると信じています。私は中国の政治治安機関で15年間働きましたが、それは今日の中国政府の最も闇の部分です」

彼は2023年に中国から逃亡してオーストラリアに渡り、同国の諜報機関「オーストラリア安全諜報機構(ASIO=Australia Security Intelligence Organization)に自身の経歴を明かし、保護を求めた。ABCによれば、中国の秘密警察・諜報機関の関係者が公の場で発言したのは初めてだという。