会議室では相手との「波長」はわからない!
私がランチの習慣を始めたのは、日本興業銀行に勤務していた20代のことでした。社食もありましたが、食いしん坊の私は同じ部署の同僚やOLさんたちと街へ。そのうち、違う部署の人、会社近くに勤める大学時代の友人、他社の友人、取引先……と食事をともにする人の幅が急速に広がっていきました。
ランチの場で得た情報をビジネスに活かそうと明確に意識したのは30代前半のころです。インドネシアに発電所をつくる。カタールでLNG(液化天然ガス)の採掘を始める。コロンビアにパイプラインを引く……。当時、数千億円の巨大プロジェクトを実現させるため、世界中からお金を集めるプロジェクトファイナンスという仕事をしていました。しかし、金融や会計の仕組みには詳しくても、発電所建設については全くの門外漢。いくら書籍を読んでもよく理解できませんでした。そこで、プロジェクトに携わる商社マンや他のバンカーとランチでの情報交換を始めました。
興銀を退社し、NTTドコモでおサイフケータイを普及させる仕事に携わるようになって、ランチ相手の幅も広がりました。小売業の経営者や大学教授、マスコミ関係者……、こうした人とのつながりがビジネスのヒントになったのです。
アライアンス・ランチは、一緒に仕事をしてみたい人と自分との「波長」を確かめられる場でもあります。波長とは、「この人となら何か一緒にできそうだな」というワクワクした感覚のこと。会議の場ならまだしも、メールや電話ではなかなかわかりづらいもの。ランチは波長を確認する最適な場なのです。
昼食はいつも決まったメンバーで、という人も多いでしょう。しかし、まずは半径3メートル以内にいる、あまり親しくはないけれど一度ゆっくり話してみたいと思っていた部下や上司を誘ってみることから始めてはいかがでしょう。その後、他部署の人、取引先と誘う範囲を徐々に広げていけばいいのです。
損得勘定は考えず、心の赴くままにどんどん会ってみる。これが基本です。「この人は将来出世する」「いつか自分の力になってくれる」などと算盤ばかりはじいていては、自分が考える範囲の利益しか得られません。本当のビジネスチャンスは、想定外の出来事がきっかけとなって起こるものなのです。