眺めがいい店で相手に感動を与える

とはいえ、もともと人見知りの性格で初対面の人とはうまく話をできない人もいます。私も以前は大変な人見知りでした。そこで、自ら考案したのが「ビジネス仲人」という役割を演じること。ランチを主宰し、自分が知る2人の出会いの場を提供する。いわば幹事です。

ビジネス仲人の最大の役得は、自分に特に取り柄がなくても、その人に有益なアドバイスができなくても人を紹介するだけでありがたがられ、自分の価値を高められることです。

ビジネス仲人をしても必ず仕事につながるわけではありません。しかし、プロフェッショナルたちの会話を目の前で聞くのはなかなかできない経験です。3人以上で会えば、1対1で会うときとは異なる顔を垣間見ることができるのも、ちょっとしたお土産です。

アライアンス・ランチを成功に導くためには、お店選びも大切です。もし、相手との会話が盛り上がらなかったとしても、その店からの眺めがよかったら、相手はランチの時間を損したとは思わないでしょう。「料理がおいしかった」「話題の店にいち早く行くことができた」と、何かしらの感動を提供できれば、2回目、3回目の誘いにも乗ってくれる可能性が高くなります。お店の力を借りて、ピンチをチャンスにするのです。

私は自分の「ホームグラウンドの店」を東京の主要な駅ごとに持っています。店員と顔馴染みの店なら、いい席を融通してくれることもあります。相手のオフィスから徒歩5分圏内あたり、少なくとも丸の内、銀座、青山、六本木といった主要エリアに「ホーム店」を数軒ずつ持っておきたいところです。

お勘定は誘ったほうがするのが筋です。よって、私のようにほぼ毎日誰かとランチを実行していると出費はかさみます。しかし考えてみれば、ディナーなら1万5000円かかる店が、ランチなら5000円程度ですむ。先日、アメリカの有名投資家ウォーレン・バフェットさんとランチをともにする権利がオークションにかけられ、落札価格は263万ドル(約2億1000万円)でしたから、それに比べればリーズナブルなものです(笑)。

思えば、最初の本『アライアンス仕事術』を出版したのも、取引先の社長とのランチがきっかけです。「昨日出版社の社長さんとゴルフしたんだけど、おサイフケータイの話を本にしてみたら?」と言われ、ゴマブックスの社長を紹介されたことから始まりました。ランチは、消費ではなく自分への投資なのです。

ビジネス・ブレークスルー大学教授 平野敦士カール 
東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行を経て、NTTドコモに入社。おサイフケータイ普及に活躍。2007年、戦略コンサルティングを手がけるネットストラテジー設立。『プラットフォーム戦略』ほか著書多数。
(構成=大塚常好 撮影=上飯坂 真)
【関連記事】
朝一番の習慣:「3時のモーツァルト」をやめられない理由
なぜあのヒラ社員には情報が集まるか
「お金のとれる人脈づくり」の流儀
1回3万円! 高額セミナーの活かし方
人脈、経験を駆使!年収大幅減でもゆとり生活を送る「熟年ダブルキャリア」