各家庭で作った船を海に流すお盆の「精霊流し」の美しさ

風来堂『カラーでよみがえる軍艦島』(イースト新書Q)

また、お盆には精霊流しも行われていた。初盆を迎えた故人を極楽浄土へ送り出す長崎の伝統行事だ。各家庭を出発した手作りの船「精霊船」は、端島小中学校のグラウンドに集結し、その後海に浮かべられ、沖まで持っていっていた。灯籠の灯がゆらゆらと揺れる様子はどこかはかなくて美しい、夏の夜だけに見られる特別な光景だった。

期日は決まっていなかったが、会社(三菱鉱業)の運動会、翌4日には文化祭が開催された。運動会は、小学生から大人までが参加する島一番のスポーツの祭典。特に、アパートの立地場所をもとに決められた地区別と、職場別チームによる対抗リレーに島民は白熱した。

一方、体育館と公民館を使った文化祭では、絵画や写真、生花、書道などプロ顔負けの作品がズラリと並んでいたとか。島内では、スポーツとともに文化芸術活動も盛んだったようだ。

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