HIROTSU社「真の陽性的中率が圧倒的に高い」

この調査結果についてHIROTSU社に見解を求めたところ、次の回答があった。

真の陽性的中率が既存する他の検査よりも圧倒的に高く、N-NOSEは世の中で使っても高精度であるというものでした。(中略)今回の学会発表の結果は、どう試算、考察しても、仮にPET-CTの精度を100%だったと計算しても、N-NOSEは五大がん検査、腫瘍マーカー検査と比べて高精度であるという揺るぎない結論を示しています。
(9/25:HIROTSU社の回答より抜粋)

2日後、HIROTSU社はプレスリリースをウェブサイトに掲載した。上記の回答とほぼ同じ内容だが、次の言葉が加えられている。

第三者(日本核医学会PET核医学分科会PETがん検診ワーキンググループ)による実社会データの報告により、「N-NOSE」の実社会における感度が非常に高いことがブラインド試験により証明されました。
(9/27:HIROTSU社プレスリリースから抜粋)

学会は「高精度と結論出来る結果ではない」

不思議なことに、同社の主張は論文の内容と全く噛み合っていない。

「感度」とは、検査を受けた人のがんに反応する(見逃さない)能力。「ブラインド試験」は、データの収集や解析で起こる偏りを排除するため、検査対象やデータの解析者に情報を伏せる試験方法である。

学会が論文で指摘したのは、陽性適中率であって「感度」ではない。また、今回は過去3年間の検査結果を調べたので、「ブラインド試験」に該当するはずもない。

このように矛盾をはらんだHIROTSU社の主張に対して、学会は真っ向から反論する見解を公表した。

私どもとHIROTSU社との間には全く協力関係はありません。
(※今回の調査は)「ブラインド試験」ではなく、「感度が非常に高いこと」の根拠もありません。従って、「N-NOSEの陽性的中率が既存検査よりも圧倒的に高く、N-NOSEは世の中で使っても高精度である」と結論出来るような調査結果ではありません。
N-NOSEで高リスクと判定され、他の検診を受診される際に、過剰な心配は、必要でない場合が多いことをご承知おきください。また、逆に低リスクと判定されても安心せず、5大がん検診や人間ドック、その他がん検診を定期的に受けられることをお勧めします。
(10/3:PET核医学分科会Informationから抜粋)

今回の取材では、HIROTSU社の回答に不可解な点があったため、合計3回にわたって質問を行った。

同社からは「科学は一部抜粋ではなく丁寧に説明しないと読者の皆様には、ご理解頂けない場合もある」という指摘があったので、本記事の最後に、同社から9月27日付で届いた回答全文を掲載する。

(注)「陽性適中率」は厚生労働省の表記に準じた。ただし、プレスリリースなどの引用では、原文の「的中率」で表記している。