初の全国調査で判明した衝撃の結果とは…

がん検診は「スクリーニング」といわれ、健康な人=陰性と、がんの疑いがある人=陽性を検査で振り分ける。

線虫がん検査で「高リスク」と判定された人は、後者の「陽性」にあたる。だが、実際に「高リスク(陽性)」と判定された人のPET-CT検査を行っても、「がんが見つからない」という医師からの指摘が相次いだ。

そこで、福岡大学放射線科の長町茂樹教授らは、日本核医学会PET核医学分科会PETがん検診ワーキンググループと共同で、線虫がん検査の初となる全国調査を2023年10月に開始した。

対象期間は、線虫がん検査が発売開始された2020年10月から、2023年9月までの3年間。PET-CT検査を実施する、国内229施設にアンケートを送付して、102施設から回答を得た。

この調査結果は、研究論文として医学誌「臨床核医学」9月号に掲載された。

「線虫がん検査」の全国調査をまとめた論文(臨床核医学9月号)
「線虫がん検査」の全国調査をまとめた論文(臨床核医学9月号)

「高リスク」から、がんが見つかった割合は0.95%

「高リスク」と判定されて、PET-CT検査を受診した1053例中、がん発見は22例、陽性適中率は2.09%だった。陽性適中率とは、「高リスク(陽性)」と判定された人のうち、実際に「がん」があった人の割合である。

さらに、本来の線虫がん検査で検出できる15種類のがんでは10例、陽性適中率は0.95%だった。

論文の考察には、次のように記されている。

線虫検査の高リスク判定群は、有病率の低い一般の母集団の中から、さらに高リスクと選別・判定され5~20%に絞られた集団であり、通常より4.4~13.1倍がんのリスクが高いと想定されていることから『高リスクは、担癌状態を意味する』と仮定した場合の陽性適中率2.09%は想定よりも低い数値と思われる。特に後述の線虫検査の対象である15種のがんに絞ると1.0%未満であり低い数値である

「高リスク判定群」は、線虫がん検査で“がんの疑いがある”と絞られた集団である。だから、一般の人たちより、がんリスクが高いと想定されるのに、実際の調査結果は低い数値だった、と論文は指摘しているのだ。

この調査は線虫がん検査の精度を検証したものではない、と論文に断りを入れているが、医師らの疑問を裏付ける結果となった。