誰も「バブル到来説」に耳を貸さなかった
【岸】ええ? そんなことがあるんですか。
【森永】本当なんです。当時、私は総合計画局の労働班というところで仕事をしていたんですが、まだ自由な時代で、別部署が運用していた経済モデル(将来予測や経済政策の効果を測定するための経済の模型)をいじらせてもらっていました。
ある日、シミュレーションで株価や地価が急騰するという結果が出てきた。私は「日本にバブルが来る」と確信して、経企庁のなかで「バブルが来る、来る」と叫んで回ったんです。ところが誰ひとり「バブル到来説」を信じてくれなかった。それで頭にきたから、家を買ってやろうと思ったんですね。
【岸】いま買えば不動産は値上がりすると。それにしてもすごい度胸だ。
乳飲み子を抱える妻の夕飯はひじきだけ
【森永】当時、年収300万円はなかったかな。それでも、金利7%の住宅ローンを借りて、所沢に2680万円で中古の一戸建ての家を買ったんですよ。その結果、住宅ローンを払うと月々の手取りが6万円を切るようになってしまった。
【岸】マジで?
【森永】マジです。妻が十分な量の母乳が出なかったので、粉ミルクは最優先で買わなくちゃいけない。どんどん食事のレベルが下がっていって、どん底のときは晩御飯がハムエッグ、最悪のときは「ひじき」だけって日があったのを覚えています。
【岸】ひえ~(笑)。
【森永】ただ当時、経企庁には「残業食」っていうものがあって、終電なくなってから役所に残っている場合、店屋物をタダで取ることができたんです。だから私は必ずそこでカツ丼を食べてカロリーを補給していましたが、カミさんはどんどん痩せていくという状況で。
【岸】それは、なんとかしないといけないですよね。