たった5日間で「40兆円」の大暴落

11月上旬、仮想通貨の市場に激震が走った。大手仮想通貨交換業者であるFTXトレーディング(FTX)が経営破綻した。破綻によって、世界の仮想通貨は大きく不安定化し、多額の時価総額が失われた。報道によると11月7日から11日までの5日間で、仮想通貨の時価総額は150兆円弱から110兆円強に急減した。

FTXのバンクマン・フリード最高経営責任者(CEO)(=2022年2月9日、米ワシントン)
写真=AFP/時事通信フォト
FTXのバンクマン・フリード最高経営責任者(CEO)(=2022年2月9日、米ワシントン)

現在、FTXに関しては顧客資金の流用など、多くの問題点が指摘されている。投資家の仮想通貨離れは加速するだろう。事業運営が困難になる関連企業も増えそうだ。それに伴い、仮想通貨は大きな調整局面を迎えている。

今回のFTXの破綻は、単に仮想通貨市場だけに与える影響で済まないだろう。仮想通貨市場は大きな規模であり、失われる金額・信用はかなり大きい。世界の経済と金融市場に無視できない影響が及ぶことも考えられる。

米国では金融引き締めが長引き、潤沢な資金を基に盛り上がってきた仮想通貨の下落圧力は増すだろう。仮想通貨の投資家や関連企業に出資した、大手投資ファンドなどが損失に直面するリスクも高まる。世界の金融市場は、波乱含みの展開になりそうだ。

ビットコインの価値は1年半で13倍以上に

FTXは、仮想通貨に対するやや過剰ともいえる成長期待を代表する企業だった。近年、潤沢な資金を背景に、多くの投資家はビットコインなど仮想通貨に関心を強め、資金を振り向けた。2020年に世界各国で新型コロナウイルスの感染症が拡大すると、3月中旬にかけて仮想通貨市場は一時調整したものの、その後、仮想通貨市場の熱気はさらに高まった。

連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和の強化は大きな追い風となった。世界の投資家は過度に先行きを楽観視し始めた。個人に加えて、機関投資家も仮想通貨取引を増やした。2020年3月中旬、5000ドル台だったビットコインの価値は、2021年11月上旬に6万7000ドル台に上昇した。まさに、バブルの様相を呈していたともいえる。

その中でFTXは急成長を遂げた。同社は、仮想通貨の交換ビジネスや、仮想通貨関連の企業に投融資を行った。それを支えたのが、同社が発行し、価値の増加期待が急速に高まったFTXトークン(FTT)だった。2020年3月下旬、2.5ドルだったFTTは2021年9月上旬に72ドル台に上昇した。世界全体で仮想通貨の価値が高まるとの“根拠なき熱狂”が高まった。それが、FTTの価値を大きく押し上げた。