脳の土台をつくる「BDNF」

脳内から分泌されるホルモンであるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質が、ニューロン間の信号を伝える潤滑油のような働きをするのに対し、このBDNFはニューロンという回路自体をつくる栄養素にあたります。

つまり、BDNFは、脳力を上げるための土台、つまり脳のインフラをつくる要素なのです。

このように、BDNFは、成人になっても脳力を上げ続けることを可能にする栄養素でもあります。

写真=iStock.com/Peter Burnett
BDNFは脳のインフラをつくる要素(※写真はイメージです)

BDNFの明らかな増殖が見られた

このBDNFについての研究は、1990年代に研究者の間で大ブームとなりました。

BDNFと運動の関連について、まだ誰も明らかにしていなかった頃、カリフォルニア大学アーヴァイン校の脳老化・認知症研究所の所長を務めるカール・コットマンは、マウスによるある実験を行いました。

実験では、ステンレスのカラカラと回転する回し車の中でマウスを走らせるグループと、回し車を使わせないグループに分けました。その結果、回し車で運動を続けたグループのマウスの脳では、BDNFの明らかな増殖が見られました。

さらには、長い距離を走り続けたマウスほど、その増殖量が多いことも判明したのです。