民間保険で年金額を増やすには…

7世紀のイタリアの銀行家、ロレンツォ・トンティが考えた「トンチン保険」です。生き残った人が総取りする点が特徴で、10人が保険料を払い、うち6人が早く亡くなった場合、この人たちへの支払いはゼロで、残りを4人で分けるから保険金額が増えるという仕組みです。

日本にはトンチン保険やトンチン年金そのものはないのですが、日本生命の「長寿生存保険(低解約払戻金型) GranAge」が「トンチン性を高めた保険」とされています。加入できるのは50~86歳の男性、50~85歳の女性で、受け取り方は「10年確定年金」と「5年保証期間付終身年金」から選べ、前者では元本割れはありません。特徴的なのが後者で、5年間の保証期間が終わった後は終身年金になるので、公的年金のように生きている限り年金を受け取れます。例えば6年目など早くに亡くなれば元本割れもありますが、一定年齢を超えて長生きをするほど得になる設計です。

(熟練金融記者 大口克人)

【一言まとめ】
老後は現役時代に蓄えたもので暮らすのが基本で、年金は補助。国民年金のみの人は早めに対策を。

「1年後」がお得でも、多くの人は「今すぐ」を選ぶ

公的年金は「繰り上げで一刻でも早くもらう」 OR 「繰り下げでなるべく増やしてからもらう」
正解のない“神学論争”になりがちなこの問題。でも実は単純な2択ではなく、自分に合った受け取り方を細かく設計することもできるのです。

「年金なんてあてにならないんだから、もらえるものは一刻も早くもらわないと損だろう。すぐ死んじゃうかもしれないんだし」。高齢男性からよく聞く言葉です。これは詐欺の取材でお世話になっている夏原武先生が原案の漫画『カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義』(作画は甲斐谷忍先生、集英社)に出てくる、行動心理学の「異時点間の選択」ということでしょうか。「今すぐなら1万円もらえ、1年後には1万1000円もらえる」という時、多くの人は今もらう方を選択します。1年後の方が有利なのに、人間は目先の利益の方を選んでしまいがちだということです。では公的年金は、繰り上げ・繰り下げのどちらが得なのでしょう?