65歳まで支払期間を延長するという「選択肢」

「100年安心」というキャッチフレーズが付けられている日本の年金制度。今年は5年に1度の「財政検証」が行われ、将来の年金支給を持続可能にするために、来年には制度改正が行われる。

厚生労働省の社会保障審議会年金部会で、将来人口や働き手の数、経済成長の予測など年金財政に影響を与える前提を議論しているがその中で、いくつかの政策のオプション(選択肢)も議論されている。

厚生労働省や環境省が入る中央合同庁舎第5号館=2024年5月14日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
厚生労働省や環境省が入る中央合同庁舎第5号館=2024年5月14日、東京都千代田区

その中で最も議論を呼びそうなのが、基礎年金の保険料の支払い期間の延長だ。現在は20歳から60歳まで40年間を支払い期間としているが、これを5年間延ばし45年(20歳から65歳)にするケースを想定した計算も行っている。もちろん支払い5年延長が決まっているわけではないが、それを前提に財政の先行きを検証するということは、政府は本気で「選択肢」として検討し始めているということだ。

現役世代の負担は間違いなく大きくなっていく

逆に言えば、この夏にもまとまる「財政検証」の行方は厳しいということだ。何より厳しいのは人口の減少ピッチが想定以上に速いこと。年金財政は、年金を受け取る高齢の受給者の数と、年金を支払う働く層、いわゆる「現役世代」の数が最も重要な要素だ。これに年金基金の運用利回りや、現役世代の給与の伸び率が加わる。つまり、最も重要な現役世代の人口が大幅に減り続けることが「確定」しているのだ。今年22歳になった人たちの人口は122万人。いわゆる「大学新卒世代」である。これが、14年後には100万人を割り、その3年後には90万人も割る。2023年に生まれた子どもの数は75万人だから、そこまで減ることが分かっている。

一方で、年金を受け取る高齢者は、今後、団塊の世代の死亡によってピークを越えていくが、少子化ほどには減らない。つまり、今後、年金を支払う現役世代の負担は間違いなく大きくなっていくわけだ。

かといって、今でも高い社会保険料をさらに引き上げるというのは反発が大きい。ではどうするか。方法は2つ。年金の受取額を抑えていくか、支払額(掛け金)を増やすほかない(運用収益を増やすという道もあるがここでは除外する)。