今年の新米は去年よりもおいしい

「2024年の新米はいい出来です。魚沼コシヒカリは去年よりいい。米の味は日照量が重要。今年は晴れた日が多かったからおいしい。実は去年も晴れが多かったけれど、フェーン現象で熱風だった。ずっと暑いところにさらされているようなものだったので、稲が脱水症状になりました。米は根から水分をあげるんですけど、間に合わなくて白い米になった。

白くなった米は炊いてもおいしくないと思うんですよ。今年は暑かったけれど、フェーン現象にはなっていないから、いい米になってます。収穫量は去年と同じくらいかな。9月中頃まではよかったけれど、それから大雨になって稲が倒れましたから、稲刈りが進んでない。倒れて水を含んだ稲を刈るとコンバインのなかに詰まっちゃう。故障が多くなるから大変です。

地球温暖化は進んでいるんでしょうね。

僕が米作りを始めた頃、8月でも魚沼は涼しかった。窓を開けて寝ると寒かった。

『西側の窓を開けて寝ると風邪をひく』と言われてました。魚沼盆地の西側には高い山があって、山から涼しい風が吹いた。あの頃はエアコンも付いてなかった。ところが、もうそんなことはないし、平成の終わりから、どこの家でも夏になるとエアコンをつけっぱなしにして寝てますよ。

高温が続いて稲刈りの時期が早くなりました。以前は稲刈りは9月15日から後だったけれど、今は9月に入ったら稲刈りを始めます。それ以上、時期を後ろにすると、稲が伸びすぎて倒れやすくなる」

筆者撮影

よい稲には「夏の夕立」が必要

「稲刈りを始める日は『穂がついた日から、毎日の気温の和が1000を超してから』と決まってます。例えば穂が出るのが8月5日とします。1日の平均気温が25度だったら、掛ける40日で1000度じゃないですか。それで9月15日から稲刈りを始める。でも、今は平均気温が30度を超えるから今年は9月1日から始めました。

昔より、仕事は忙しくなってますよ。ただ、僕はもう子どもも大きいし、土日も働いてます。もう楽しくて楽しくて休みたくない。米作りって、自分の子どもを育てているのと同じだから、田んぼへ行くのはほんと楽しい。

「おいしい米を作るには、ひとつは地域環境です。魚沼の気候と水が水田耕作に適している。それから初夏から夏にかけての日照時間。雨が続くと不作の原因になる。大切なのが夏の夕立。魚沼では夏になると夕方、ザーッと雨が降る。昼間の日光で熱くなった稲穂が冷やされて、それで、うま味が増す。

最後に土壌改良をやること。これはどこの農家でもやっているわけではないですが、僕自身はやってます。土壌で米の味が決まるんじゃないかと思ってます。ただ、コストがかかるんですよ。もみ殻と牛糞を発酵させた堆肥を田んぼの土に混ぜる。効果が出るのは4年後からと言われてますけれど、堆肥で土壌改良するとおいしい米になります」

筆者撮影
インタビューは笠原さんの自宅で行われた