構造を理解し、話を正しく配列する
あいさつをするということは、突き詰めれば「自分はあなたの味方です」という気持ちを示す行動です。味方に対して人は危害を加えませんし、むしろ仲間となって何かをしたいと考えるでしょう。
「あなた」が何かに挑戦したいと考えたとき、困っているとき、それに気づいて手助けしてくれるかもしれません。こうしてつながりが大きく拡がっていく。あいさつは人と人のつながりの一番基本なことであり、これを大人の言葉ではコミュニケーションと呼び、会社で働いている大人が一番大事にしていることの一つなんだよ――例えばそんな風に噛み砕いて説明してみるのも方法かと思います。
40代の人であれば、相手が30代の部下か60代の上司かで、同じ企画でも伝えるポイントは変わってくるでしょう。また、相手が同じ20代の部下でも、その人たちの性格によって語彙や表現を変えるということはあると思います。
「早急にこれをするべきだね」という表現と「これをしてみたらどうだろうか」では、同じプランの提案であっても受け取る側の印象は大きく変わるはずです。あるいは、「AとBとCの課題のうち、Bについては難易度が高いので、彼には今回はAとCだけ伝えておこう」という場合もあるでしょう。
話を構造化して正しく置き換え、理想的な配列で言語化できる人が「話し上手な人」といえるでしょう。
長いスピーチが喜ばれる場はどこにもない
話が苦手な人のさらなる特徴として、「無駄に長い」というものがあります。無駄に長い文章が職場の上司をイラつかせているのと同じで、披露宴のスピーチが長すぎると聞いている側はうんざりしてしまいます。
話が長い最大の理由は要約力が無いことにつきます。伝えるべきポイントがわかっていないため、要らない言葉まで混ぜこんでしまい、さらに話す順序も適当でないので、言葉にすると無駄に伸びてしまいます。
そもそもコンパクトに要約できていないのに、それをおかしいと思わずに披露宴でスピーチしてしまうのは、その人に時間感覚が無いということです。「できるだけ手短に話そう」という意識を持たずにスピーチに挑むのは、40歳以降の残りの人生で絶対にしないと固く決意すべきです。
講演会でもない限り、長いスピーチが喜ばれる場など世界のどこにもありません。また、上手な話し方には具体的な類似エピソードをつけ加える「例示」の感覚も必要です。これにより話の中身がぐっと説得力を増すのです。つまるところ、上手な話し方は「要約力」「時間感覚」「例示力」を意識するところからはじまります。これは披露宴のスピーチのみならず、業務上のプレゼンやキャリア採用の面接など、あらゆる「会話」に通用します。45歳の方がこの3つを常に意識して話す癖をつけるだけで、50歳になる頃にはまったく別の話し方をする人間になっているはずです。