ただし、「不当な勧誘によって高額な寄附をせまられ、家庭が困窮したり崩壊したりする事例が相次いで報告された問題を受けて、こうした不当な寄附勧誘を未然に防止し、被害の救済、再発防止を図るため」(同オンライン)に施行された法律で、寺院の高額のお布施請求をただちに否定、違法と判断できるものではない(法は宗教法人に限定していない)。

後者の消費者契約法については、霊感等による知見を用いた勧誘による消費者被害の深刻化に対応するための改正が行われ、2023年1月5日に施行された。内容は「霊感等による告知を用いた勧誘による契約に対する取消しの対象範囲の拡大、行使期間の延長」だ。

これも、霊感商法にあたる行為を行っている場合の被害防止が目的であるので、問題になっている高額の離檀料請求事案に適用できるケースは多くないと思われる。

筆者提供
ある宗派で実際に利用されている誓約書の一例

離檀料について正面から見解を表明する宗派

離檀料を含むお布施は「料金」ではないので、明確な基準はなく、金額に納得がいかない場合は、基本的には寺などと話し合う必要がある。それでも納得できず、埒が明かない場合は、寺が所属する宗派の本山に相談するのが良いようだ。

離檀料問題に正面から見解を表明する宗派もある。曹洞宗のHP「SOTOZEN-NET」の「宗務庁より」に「離檀料・墓じまいに関する報道について」(2023年10月25日)という記述があり、以下のように述べている。

昨今、テレビ、雑誌等にて、離檀料・墓じまいという言葉を用いた報道がなされています。特に、「離檀料は一般的に○○万円」というように、あたかも離檀料に相場があるかのような報道や、寺院維持や住職の生活保障のために離檀料を請求する寺院があるかのような意見が述べられることがあり、誤った認識が広がることを懸念しております。そこで、正確な情報に基づく報道を行っていただくため、宗門の見解として以下のとおりご案内申し上げます。

1、離檀料について
(1)宗門公式としての離檀料に関する取り決めはありません。
(2)特段の理由により離檀される場合において、檀信徒から、離檀料を頂くようになどという指導も行っておりません。
(3)離檀に当たり、これまで先祖代々がお世話になった感謝の気持ちとして、布施を納めてくださる場合がありますが、(1)、(2)に記載のとおり、宗門において統一的な取り決めや指導はありません。地域の風習や慣行、寺院と檀信徒との関係性において、当事者間の話し合いにより決まるものと考えております。
(4)菩提寺との関係について疑問や要望をお持ちの場合は、出来る限り早い段階で、菩提寺にご相談されることをお勧めします。

2、墓じまいについて
(1)宗門公式として墓じまいという用語は用いておりません。
(2)使用している墓地区画を、特段の理由により別の場所へ移す場合、市区町村から墓地改葬許可を得た上で、墓地区画内の墓石を撤去し、原状に復することが必要となります。この場合、墓地撤去費用等の工事費用がかかる場合があります。また、墓地使用規則等が存在する寺院においては、当該規則等で定められた手続や義務を遵守すべき場合があります。墓地使用規則等の有無・内容については、墓地管理者(寺院墓地の場合は菩提寺の住職等)にお尋ねください。