近年、転居による地方の過疎化や少子化などの影響もあり、継承者がいない無縁墓が増えるとともに、「子どもに負担をかけたくない」、「お墓が遠方にありお墓参りが難しい」、「夫婦それぞれの実家のお墓を守るのが大変」など供養に関する価値観の変化から、墓じまいを検討する人が増えている。
檀家制度が崩壊しているともいわれる。檀家とは特定の寺に属し、葬祭供養や墓の管理を行ってもらう家のことだが、過疎地に限らず地方から関東圏に移り住んだ人たちの中には、檀家制度をきらい、離檀するケースが増えているという。
秋川雅史が歌う「千の風になって」が2006年以降大ヒットしたが、「私のお墓の前で泣かないでください そこに私はいません 眠ってなんかいません」という歌詞が人々の心に響いたように、亡くなったら墓石の下の真っ暗なカロートに入るという考えを支持しない人が増えたことも一因だろう。
「過去帳に8人が載っているので700万円かかる」
2022年6月に国民生活センターは「墓じまい・離檀料に関するトラブルに注意」という注意情報を出して、以下の二つの事例を紹介している。
●自宅から遠く、自分も入るつもりはないので、墓じまいを寺に申し出たところ、300万円ほどの高額な離檀料を要求され困惑している。払えないと言うとローンを組めると言われた。(80歳代 女性)
●跡継ぎがいないのでお寺に離檀したいと相談したところ、過去帳に8人の名前が載っているので、700万円かかると言われた。不当に高いと思う。(70歳代 女性)
前述の通りお布施はサービスへの対価ではないはずだが、お墓を片付け、寺など墓地の管理者に返還する墓じまいの際に、高額なお布施を請求されるケースが目立ち、「離檀料」という言葉も注目を集めた。離檀料とは本来、檀家をやめるときに寺へのお礼として慣習的に支払うお布施だ。
問題は、墓じまいは勝手にできず、先ほど述べた寺などが発行する「埋葬証明書」が必要であることだ。これがないと、墓じまいした後に遺骨を別の墓地や霊園に納骨できないので、お寺が強気に出てくることもあるようだ。
苦情事例にある「ローンを組んでお布施を払え」という僧侶がいるのは驚きだ。「高額なお布施を請求され、払えないというと、分割払いでよいと言われ、後日、僧侶が取り立てに来た」という話も聞いたことがある。
霊感商法の救済策は拡充されたが…
政府広報オンラインは、2024年7月17日に「不当な寄附勧誘行為は禁止! 霊感商法等の悪質な勧誘による寄附や契約は取り消せます」と題する記事を公表し、「不当な寄附勧誘を防止し、被害からの救済や再発を防ぐため新たな法律が制定されました。また、消費者契約法等の改正が行われ霊感商法等による被害の救済が拡充されました」としている。
前者は、不当な寄附勧誘を未然に防止し、被害の救済、再発防止を図るため、2023年6月1日に全面施行された「不当寄附勧誘防止法」だ。同法は、「寄附勧誘を行う法人等への規制等」と「不当な勧誘により寄附した人やその家族の救済」の2つを軸に構成されている。