3つの課題

経済産業省レポートでは触れられていませんが、書店の粗利益率も国内外では大きな差があります。日本は23%~24%ですが、アメリカ、ドイツの書店は40%程度の粗利益率があります。

韓国で特筆すべきは、日本の消費税にあたる「付加価値税」が韓国の出版物において免除されていて「出版文化産業振興法」では、公共図書館も地域書店から購買するよう強く推奨され、行政が地域の書店を守ろうとしている点です。

日本の出版界の課題は以下の3点。

1.「流通側の利幅の薄さ」、2.「出版物物流の硬直性」、3.「体系的教育の不在」の3点です。

そして、そんな課題を誰にも忖度することなく自由に議論してこなかったことに出版界自身の課題があります。

そもそも産業構造として成立していない

街の書店は危機に瀕していて、その数は7000軒を切りピーク時の半分以下になり、地方自治体の4分の1には書店が無くなりました。それは何故なのか? 解決の方策はあるのか? 日本の書店の現状と課題についてお伝えしようと思います。

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書店業は産業構造として成立していません。どんな業種も粗利益の範囲内にコストが収まらないと赤字になって倒産します。当然ながら書店も例外ではありません。

書店は再販制度で販売価格が決められていて自分で変えることはできません。仕入は本の問屋である取次のトーハンや日販から仕入れますが、トーハンの2023年度取次事業は13.6億円の赤字です。日販はさらに厳しくて36.3億円の赤字です。当然、取次は赤字部門である書店への卸値を下げることはありません。

薄すぎる利益率

地方書店の平均的な営業総利益率(粗利率)は23%から24%ですが、書店は販売価格も仕入値も改善できないのですから、この薄い利幅が改善されることは決してありません。一方、経費である人件費、家賃、水道光熱費、電子決済手数料は増えるばかりで、経費が粗利益を超えてしまって赤字になっているのが、書店経営が置かれている厳然たる事実です。

「2028年街の書店が消える日」はブラフではなくて、現在起きつつあるファクトです。各地で書店の閉店が相次ぐのは、ビジネスとして従来型の書店経営が終わりを迎えたという現実です。

その事に目を背けて「個性的な書店」だの「複合化」だのという議論をしても仕方ありません。書店の利幅改善がなければ、どんな施策も砂上の楼閣です。

一方で書店にも従来とは異なり、返品自由な委託制度に甘えず一定程度の注文買切りに対応できる仕入能力向上による返品減少への取り組みが強く求められます。