ジャンプの発売日は本来なら土曜日

経済産業省レポートにもあるように、日本の出版物流が優れているのは、雑誌と書籍が混載されて書店に配送されるので、全国各地に安価で運搬できていることにあります。しかしながら、その利点を台無しにしている出版界特有の謎のルールがあります。それが「雑誌発売日協定」です。

どんな業界でも出来上がった商品は1日も早く消費者に届けるようにしますが、出版界はコストと手間を掛けて「雑誌発売日の同一地区同一発売日」を死守しています。

分かりやすい例をだすと、週刊少年ジャンプの発売日は全国一律月曜日です。週刊文春の関東エリアの発売日は木曜日ですが、北海道・九州エリアは翌週の月曜日にしています。

この謎の協定を廃止すれば、週刊少年ジャンプの発売は土曜日になるでしょうし、週刊文春の北海道・九州エリアでの発売日も数日は早くなるでしょう。

雑誌発売日順守のルートに混載された書籍配送は硬直化していて、東京で出荷された書籍が北海道・九州の書店に着くには5日後になります。

出版界が消費者利益よりも業界内都合を優先する「雑誌発売日協定」を守り続ける限り出版界に物流のイノベーションは起こせません。

誰も現状を変えようとしない

日販は赤字部門であるローソン・ファミリーマートの雑誌配送を2025年に休止して、トーハンが引き継ぎます。トーハンも赤字部門はそのままにしておけないので、合理化してコンビニ1万軒への雑誌配送中止も含めた見直しを検討しています。

もし、このカルテルがなければ取次の赤字部門であるコンビニ雑誌の配送を雑貨と混載することも可能になり、大幅なコスト削減とCO2削減にも寄与できますが、その声は出版界から上がっていません。

現在の雑誌と書籍の混載を基本として「雑誌発売日協定」を廃止すれば、時代遅れになっている出版物流通に大きな改革が起きることでしょう。

流通側の粗利益率の低さは明白なのですが、それを具体的に改善する動きはありません。書店の声は小さくて出版社に届きません。取次が主導して出版社と書店の利幅含めた交渉が必要でしょうが、寡聞にして取次が出版社に対して書店の分も含めた粗利率交渉をしている事を聞くことはありません。

取次が出版社に条件交渉をするのは、公正取引委員会の規制があるのかもしれませんが、この状態が放置されれば取次も書店も共倒れになることは間違いありません。