そのために私は「原因を円グラフで書く」手法を勧めています。これは起こっている事態を冷静に捉えるのにとても役立ちます。
例えば夜中に彼氏の家に電話をしたのに、つながらなかったとしましょう。そうすると「きっとほかの女の家にいるのね!」と、猜疑心でいっぱいになるわけですよ(笑)。そのときの円グラフは100%「ほかの女」で真っ黒です。しかしそこで「本当に100%だろうか?」と疑ってみる。すると「待てよ、あの人は、そんなにモテるタイプだったかな?」と思い始め、100%はいきなり18%くらいのリアルな数字に下がります。残り82%についても、「上司と飲んでいて帰りが遅いのかも」とか「お母さんが訪ねてきたから電話に出にくい」、あるいは「事故に遭って瀕死の可能性もゼロじゃない」など、円グラフが100%になるまで考えるんです。原因は何でもよく、数値も自分の感覚で決めて構いません。
円グラフを埋めるためにあらゆる可能性を考えることで、原因は特定できないとわかり、おのずとクールダウンしてくるのです。少なくとも、上司が自分と目を合わせないのはリストラを考えているからだと決めつけ、いきなり「私のことをどう思っているんですか!?」と詰め寄って、事態を悪化させるのだけは避けられるでしょう。
これは「認知療法」という、自分が認知していることを一度疑って検証する治療法を応用したものです。続けていくうちに、しだいに円グラフを書かなくてもその事態を引き起こした原因を広い視野で捉える癖がつき、問題に直面しても建設的な解決策を見出すことができるようになっていきます。