デリバリーの成長には「少し高くても利用する理由」が必要
さて、セブン‐イレブンを運営するセブン&アイは上場企業です。この規模の企業が株価を上げていくためには基本的に売上を成長させる必要があります。国内に関して言えば、店舗数がそろそろ頭打ちという事情から、店内の売上だけでなくデリバリーの売上も増やすという戦略には魅力があります。
しかし店内の商品をデリバリーで届けるためには追加の配送コストがかかります。結果として7NOWの利用者の支払額が店舗で買う場合の約1.5倍になるのは、コスト構造上仕方ありません。その前提でデリバリーの売上を伸ばすためには、ユーザーが少しぐらい高くても7NOWを利用する理由が必要です。
そこで「ユーザーを拡大するにはピザが武器になる」という発想が生まれたのでしょう。実は宅配デリバリーの領域では、ピザを注文する人はそれほど価格を気にしない傾向があることがわかっています。
ポテトチップスもカフェラテも一緒に買える
そもそもコロナ禍でデリバリービジネスが誕生するずっと以前から宅配ピザのサービスは続いていました。その宅配ピザをよく利用する人は人口のだいたい10%程度です。シチュエーションとしては夜、仲間が集まっているとか、ふたりで映画の配信サービスを楽しむとか、コストよりもその場の体験価値を重視する場合に宅配ピザを注文します。
それと同じユーザーニーズに関して「セブンでもピザが注文できる」ことの意味は何かというと、品揃えがピザだけではないことです。セブンならピザに加えてポテトチップスもからあげ棒もカップ麺もスタバのチルドカップのカフェラテも、ついでにたばこも選ぶことができます。
これまで長い時間をかけて宅配ピザチェーン各社が宅配ピザ市場を広げてきてくれたおかげで、セブンもそのユーザーニーズに相乗りできるし、しかも宅配ピザ専業の競争相手と比べると違った価値が提供できる。だからピザは7NOWを拡大する際の武器になるということです。
しかし、この考え方、事業戦略として捉えると、まだまだ山と谷が存在するのです。