「一部の農家が潰れるのはやむを得ない」が政府の本音

いま政府がやるべきなのは、これまでの農政を転換し、農家を保護して生産を奨励する方向に舵を切ることだ。

だが、今のところ政府の姿勢に変化は見られない。今年は25年ぶりに「農業の憲法」とも言うべき「食料・農業・農村基本法」が改正されたが、政策の転換は見送られた。

それどころか、「これまでの農業政策は正しい。農業の生産性向上のためなら、一部の農家が潰れるのはやむを得ない」という新自由主義的な方向性がより強く打ち出されている。

事実上の「国家総動員法」さえ成立

新たな「農家いじめ」も導入された。

台湾有事をにらんで今年5月に成立した、「食料供給困難事態対策法」がそれだ。

鈴木宣弘『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社+α新書)

日本で食料危機が発生した場合、農家に米、大豆などの増産計画の届け出を指示し、拒否すれば罰金を科す、という法律だ。事実上、農家から半強制的に食料を「徴発」する法律で、戦前の「国家総動員法」を彷彿させる。

そんな急激な増産が実際できるわけがないし、していいわけもない。

そもそも、現在の「農家いじめ」が今後も続くとなると、いずれ農業従事者は激減してしまう。農村は破壊され、増産どころか、いずれ国内農業消滅の危機に直面するであろう。

このような状況下にありながらも、政府は対応するつもりがまったくない。

となると、「令和のコメ騒動」は長期化、慢性化すると考えるのが自然だろう。

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