自分から働きかけよう

当時私が住んでいたマンションのエントランスをふたりで歩いていたときのことです。マンションの住人が数人、立ち話をしていました。私は近所の人と友達になりたいと思っていたのですが、話している彼らを見て、怖気づいて挨拶できませんでした。

自室に入ると、近所の人と友達になりたいと思っていたことを知っていた彼氏がこう聞いてきました。

「自分自身にどんなアドバイスする?」

「自分から働きかけなさい、自己紹介しなさいって」と、もごもごと答えました。

「そのとおりだね」と言いながら、彼は私をエントランスへと押し戻しました。気まずさを感じつつも、あいさつをする責任、つまり内的な統制の所在は自分の手の中にある、と私はわかっていました。

「こんにちは。最近引っ越してきました。ごあいさつだけしたくて」

隣人はオープンでフレンドリーな人たちでした。連絡先を交換して別れ、その後はメッセージ・アプリのグループチャットでおしゃべりするようになりました。そのグループの人たちで、ピクニックを毎週するようになりました。

あいさつなどのちょっとした行動は、人生にそこまで大きく影響しないと人は思うものです。でも、実際はするのです。たった1回のあいさつが、孤独でいるか、親友を見つけるかの違いをつくる可能性もあります。

内的統制型でい続けることは、友情の始まりの段階だけにとどまらず、全段階でプラスとなります。

マリサ・G・フランコ『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(日経BP)

「友達とは、自ら動いたときにできるものだ」と考えれば、内的な統制の所在を発達させることができます。もっと距離を縮めようとすれば近づける、と信じるようにもなります。

友情は何も努力せずに育つはずだとか、相手が自分を選んでくれるまで待たなければ友達はできない、という決めつけを手放せるようにもなります。

自分が選ぶのです。自分が働きかけるのです。自分がフォローアップするのです。会いたいと自分が思ったときに誘うのです。このプロセスの責任を自分が持つのです。

しかしそれにはまず、こうしたことを邪魔する可能性のある根本的な決めつけを探り、解決に向けて取り組む必要があります。

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