なぜ孤独を感じる人が増えているのか。心理学者でフレンドシップ専門家のマリサ・G・フランコさんは「1800年代以降、産業化で核家族化が進み、仕事のために引っ越すようになると友情は使い捨てになった。テクノロジーが進化して人と交流をしなくても生活が送れるようになったことが拍車をかけて、人類史上もっとも友達をつくりにくい時代になっている」という――。

※本稿は、マリサ・G・フランコ『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(日経BP)の一部を再編集したものです。

夕暮れに一人でブランコに座る男性
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かつて人は「孤独」とは無縁だった

大人になると、友達づくりはどうしてこんなに難しくなるのでしょうか? 以前のように自然と生まれるようには思えません。高校や大学でも十分難しいものですが、多くの人にとって、その後はさらに飛躍的に難しくなります。

そもそも、一体どこに出会いがあるのでしょうか?

知らない土地で暮らし始める場合、みんなすでに顔ぶれが定着した人たちと仲よくしており、さらに難しそうです。どうやって割って入っていけばいいのでしょう?

友達がいない自分を責める前に、友達づくりがいかに大変かをここで見てみましょう。これは、現代という時代に悪化した問題なのです。

私たちは孤独を、人間の必然的なあり方として語る傾向にありますが、そんなことはありません。1800年代以前、人々は農業をしながら家族と共に暮らし、今よりも変化の少ない、地域に根づいた生活をしていました。親類や友達によってできた地域社会があり、村での生活や信仰の場に関わりながら生きていたのです。

コミュニティは求めるものではなく、自分たちでつくるものでした。

1800年以前は、今の私たちが知る「孤独」という状態を意味する言葉さえも存在しませんでした。「lonely」〔孤独な〕という言葉は、「単独でいる」という状態を描写するものであり、激しいほどのその痛みを指すものではなかったのです(※1)

※1 Fay Bound Alberti, A Biography of Loneliness the History of an Emotion (Oxford: Oxford University Press, 2019).『私たちはいつから「孤独」になったのか』(フェイ・バウンド・アルバーティ著、神崎朗子訳、みすず書房2023年刊)