一定期間に何度も復習すれば忘れない

学習効果を高めるには、勉強のスケジュールの組み立て方もポイントです。

ある学習範囲を一度に続けて勉強することを「集中学習」と言います。ただ、試験前にどれだけ一夜漬けで頑張っても、試験が終わると覚えた内容を忘れてしまうのは皆さんも実感があるでしょう。

せっかく頑張って勉強しても、時間が経てば、覚えたことを忘れてしまうのが人間です。ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスは、無意味な音節を覚える実験で、2日後には約4分の3、1カ月後に約8割を忘れてしまうことを記述、ここから有名な「忘却曲線」が生まれました。

忘却曲線を乗り越えるためには「復習」が重要となります。脳の海馬という部位には、脳に入ってきた情報を長期記憶として保存すべきかどうかを仕分けする機能があります。一定期間内に何度も入ってきた情報は、「重要だから保存しよう」と、海馬は判断します。したがって、繰り返し復習するのが、記憶にとって肝心なのです。

長く記憶したければ、集中学習ではなく「分散学習」を意識してください。同じ学習範囲を同じ時間をかけて勉強するにしても、例えば7時間かけて一夜漬けをしても、長期的な学習効果はほとんどありません。勉強内容を小分けにして1日1時間ずつ、間隔を開けて勉強する分散学習のほうが、はるかに効果的なのです。

この分散学習と、先ほどのアクティブリコールを合わせた「連続的再学習」が最高の勉強法だと考えます。

また、同じ内容を集中的に勉強する「ブロック学習」よりも、近い分野で少しだけ異なる内容を交互に勉強する「インターリービング」のほうが、効果が高い勉強法です。例えば公認会計士の資格であれば、一日中財務会計の内容を勉強するよりも、財務会計と税務を交ぜて勉強したほうが長期的な記憶に定着しやすくなるでしょう。

米国南フロリダ大学の研究によれば、立体の体積の求め方について大学生にブロック学習とインターリービングをしてもらったところ、最終試験の正答率は前者が20%だったのに対して、後者は63%と大差がつきました。

思い出せなくても勉強中なら気にしない

これらの勉強法は、資格や試験の勉強だけでなく、新しい知識を身につける場合、どのような状況でも役に立ちます。例えば、本を読んだ後、1週間後に内容のほとんどを忘れてしまう人が多いと思います。しかし、読書でもアクティブリコールと分散学習を組み合わせれば、どんな本の内容でも覚えやすくなります。

勉強中は白紙に向かっても思い出せずに、「覚えられない」と自信を失ってしまうかもしれません。ただ、一喜一憂する必要はありません。大事なのは、試験などの本番で効果を実感できること。本当に学習効果の高い勉強法をぜひ実践してください。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

(構成=野澤正毅 撮影(書籍)=市来朋久 図版作成=大橋昭一)
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