時間をかけて本を読んだはずなのに、どんな内容か忘れてしまった……そんな悩みとはもうおさらば。効率的に覚えられて、しかも忘れない。数々の研究で明らかになった最強の勉強法を紹介する。

繰り返し本を読むのは効率が悪い覚え方

教科書よりも、綺麗にまとめたノートよりも、蛍光ペンよりも、勉強に役立つ道具は、「真っ白な1枚の紙」。何を言っているのかと思われるかもしれません。しかし、何も書かれていない紙こそ、最高の勉強道具だということは、科学的にも証明されているのです。

勉強法の研究は、世界で100年以上の歴史があります。その中から40冊以上の本と100本以上の論文を読み、学習効果が最も高いと実証された勉強法を調べました。そして、それは僕自身も実践し、学習効果を実感していた勉強法だったのです。

語学や資格試験などの勉強で本の内容を覚えようとするとき、多くの人が学生時代から続けている一般的な学習法の代表が、教科書などを繰り返し読む「再読」でしょう。残念ながら、科学的に見ると再読は学習効果が低いことがさまざまな研究でわかっています。

例えば、米国コロラド大学の大学生を対象にした研究。約1500~1700語の文章を、2回続けて読むグループと1回だけ読むグループに分け、2日後に文章の内容を問うテストをしたところ、両グループの成績に有意差はありませんでした。

再読の学習効果が低い理由の一つとして挙げられているのが、「流暢性の錯覚」と呼ばれる心理現象。2回目以降の読書では本の内容に慣れているため、理解を深めたり記憶を強めたりする脳の情報処理が行われにくくなると考えられています。

念のために言っておくと、再読に学習効果が全くないわけではありません。ただ漫然と再読すると、労多くして実りの少ない、効率の悪い勉強法になってしまうのです。

凡庸な人が成績優秀に変わる科学的な勉強法

本の中で大事な箇所にマーカーやアンダーラインを引いたり、本の重要な部分をノートに書き写したりするのもポピュラーな学習法です。しかし、米国の大学生を対象とした研究によれば、文章を蛍光ペンでハイライトをしても、しなくても、学習効果に違いはありませんでした。ハイライトをしたことで、「勉強した気になっているだけ」ということもあるので注意が必要です。

文章をノートに丸ごと書き写しただけでは学習効果が上がらなかったという米国の高校生を対象とした研究もあります。教科書のポイントを綺麗にまとめたノートを作成して勉強した気でいる学生をよく見かけますが、学習効果はあまり期待できないのです。

では、科学的に見て記憶に定着しやすい勉強法とはどのような方法なのか。その一つが、「白紙に向かって、勉強したことを思い出しながら書き出す」という勉強法です。

白紙に向かって思い出す「白紙勉強法」の手順

僕は慶應義塾の付属高校を首席で卒業し、同大学医学部卒業時の成績は8位。日本の医師国家試験の後、米国の医師国家試験にも医学部卒業の直前に挑戦し、上位1%以内の高得点で合格もできました。こう言えば、「なんだ。自分は頭がいいって自慢かよ」と思うかもしれませんが、残念ながら僕の頭はいいわけではありません。自分よりも優秀な友人たちは周りにたくさんいますし、自分の記憶力が悪くて悲しくなることもあります。

では、なぜ凡庸な頭脳を持つ自分が今までなんとかやってこられたのか? その大きな理由の一つは、自分が行ってきた勉強法が、科学的にも効果の高い勉強法だったからだと思います。とはいっても、昔から自分の勉強法が、科学的に効果が高いのだとわかってやっていたわけではありません。あとになって学習に関する論文を読み込み、自分の勉強法に科学的な根拠があることを知りました。「なんだ、そんなことだったのか」と納得したのを覚えています。