一流は「段階的に叱る」

よくない行いに対しては1度目から叱る。ただし、いきなり強く言うのは効果的ではない。この前提から一流の叱り方が見えてきます。

一流の指導者は、段階的に叱ります。具体的には次のような3段階です。

1度目はソフトに(LEVEL I)
2度目はピシリと(LEVEL II)
3度目は厳しく(LEVEL III)

では、それぞれのイメージを、チームミーティングに新入社員が連絡なく遅れてきた場合にあてはめてみましょう。

LEVEL I「ソフトに」

これは、現代の指導者層からすると「叱る」レベルではなく、ソフトに注意するといったものです。例えば、ミーティングがすでに始まっており、上司が話しているところに、新入社員が入ってきたとします。

上司】(話を一度止め、新人のほうを見て)「どうした?」

新人】「ちょっとクレームがありまして」

上司】「そうか。わかった。次は時間通りに来てくれよ。頼むぞ」

「生ぬるい」と思うかもしれませんが、叱られ慣れていない現代の若者層には、この程度でじゅうぶん効き目があり、行いを正してくれる可能性大です。また、時間通り来た先輩社員も「遅れてくると言われるんだな」と感じ、規律崩壊を防げます。

LEVEL II「ピシリと」

1度目にソフトに注意すれば、たいてい直してくれますが、再発した際の2度目のイメージも作っておきましょう。先日、ソフトに注意したにもかかわらず、再びチームミーティングに連絡なしに遅れてきたとしましょう。

「みんなって誰のことですか?」を避ける方法

上司のセリフ

「10分遅刻。2度目だよ」(事実)
「私は進められなくて困っていた」(影響)
「時間通りに来てくれ」(指示)
「どうしても遅れるときは事前に連絡してくれ」(選択肢)

これらのセリフを、相手の目を見て、ピシリと告げます。最初からこのレベルをやると少々厳しすぎますが、今回は2度目という想定なので、この程度は必要です。

上記の「事実」―「影響」―「指示」―「選択肢」という枠組みは、相手に意思を伝達し納得させる方法として知られる「DESC法」を応用したものです。事実をベースに客観的に話しながら、相手にやってほしいことを伝え、選択肢を示すことで追い込み過ぎず、納得を得るという話法です。

このプロセスの中で、やってしまいがちなのが、「影響」のところを「みんなに迷惑かけるじゃないか」といったセリフにしてしまうこと。そうすると、相手は「みんなって誰のことですか?」と心の中で反論してしまいます。それを避けるため「私は困っていた」とIメッセージ(私を主語にした表現)にします。そうすれば、「あなたは困ってない」という反論はできず、ストレートに伝わります。

今回、冒頭でさまざまな新入社員の非常識な行動を挙げましたが、「事実」―「影響」―「指示」―「選択肢」という言い方は、どの行動に対しても活用できます。LEVEL Iで注意したにもかかわらず再発したときには、ぜひやってみてください。