「食事中のスマホ使用禁止」など、飲食店の独自ルールをめぐるトラブルは絶えない。それでも店側がルールを設けるのはなぜなのか。グルメジャーナリストの東龍さんは「競争が激しい外食産業で生き残るために、自衛手段としてルールを設けている店が多い。理不尽に思える『スマホ使用禁止』にも理屈はある」という――。
赤提灯に「ラーメン」の文字
写真=iStock.com/DK Media
※写真はイメージです

「店内でイヤホンやめて」でラーメン店が炎上

今年7月、東京都内の人気ラーメン店がXに「店内でイヤホンをつけるのをやめてほしい」と投稿したことを発端に、飲食店の“独自ルール”をめぐる議論が盛り上がった。

昔から口うるさい飲食店は多く、各店がそれぞれにルールやマナーを設定するのは今に始まったことではない。ただ、誰もが発信できるSNSの時代になってから、そうした決め事に対する反発や不満が表出するようになった。理解を示す向きもあるが、どちらかといえば反対派のほうが多いようだ。中には「そういった店には絶対に行きたくない」という主張も散見される。

総務省が定める「日本標準産業分類」の定義によれば、飲食店とは「主として注文により直ちにその場所で料理、その他の食料品又は飲料を飲食させる事業所」。飲食店を営業するのに主に必要となるのは、食品衛生責任者と防火管理者を置き、管轄地域の保健所から飲食店営業許可を取ることだ。ちなみに、よく勘違いされているが、調理師免許の取得は必須ではない。

つまり、食品衛生法は遵守しなければならないが、それ以外については自由度が高く、オリジナルのルールが創出可能なのだ。それゆえに、運営者の暴走にも見えるようなルールが制定され、さまざまな角度から炎上が起きやすいといえるだろう。