予習してから読んだほうが理解は深まる

1は、いわゆる古典、名著と呼ばれている本です。たとえば、松下幸之助さんの『道をひらく』(PHP研究所)やスティーブン・R・コヴィーの『完訳7つの習慣』(キングベアー出版)などは、このタイプに入ります。古典や名著には、さまざまなところにエッセンスがありますから、「すみずみまでしっかり理解すること」が重要です。そのためには、本を読むときも、いきなり読み始めるのではなく、準備が必要です。僕は、YouTubeの解説動画を事前に見たり、要約を読んだりして、予習するようにしています。そうすると、本を読んだときに細部まで理解できます。

最近も池上さんからマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)が宿題で出たときに、YouTube解説動画を見て、概要を理解してから読みました。難解な本でも予習してから読むことで、ぐっと理解が深まります。

2の本は「きっとこんなことを教えてくれるだろう」と仮説を立ててから読んでいます。そうすることで、重要なポイントを意識しながら読むようになります。仮説が外れたとしても「意外にこの辺が面白かったな」といった、別の気づきがあります。

3の本は、とにかく最後まで読むことを優先します。これはアメリカにいたときに身に付いた読書法です。当時は、とにかく大量の論文を読まなければなりませんでした。まずは、ざっと読んで全体を把握してから、次に2回目を読みます。本も論文も1回読んだだけでは、よく理解できません。2回目を読むことで、自分の知りたいことや興味のあることに、より多く気づきます。ですから、本当にいい本は、2回読むことを前提にして、読み始めるといいでしょう。その場合、1回目に真面目に読みすぎると力尽きて、2回目を読む気力を失ってしまいます。

分厚い本を読み切るのは、マラソンに似ています。2kmの地点で汗だくになってしまうと、「まだ40km近くも残っているのか……」と心が折れてしまいます。飛ばし飛ばしでもいいので、まずは、42kmを走ってみることが大事です。走るのが無理なら、途中で自転車に乗ってもいいですし、車に乗ってもいいのです。とにかく、ゴールしましょう。

実際に走り切ってみると、飛ばし飛ばしでも、達成感が得られます。本であれば、仮説を立てて、ポイントだけサクサク読んでいくことで、「この本には全体でこんなことが書いてある」ことが何となくわかります。それで興味が湧いたら、2回目にチャレンジするのです。「次はもう少しこんなところを意識して読もう」と考えながら読みます。この方法をとると、かなり深く全体を理解できるようになります。