大阪・関西万博が起爆剤になる可能性

欧州など海外ではクレジットカードによる「タッチ決済乗車」が普及している地域もあるなかで、インバウンドにとって、わざわざSuicaやPASMOなど日本国内限定の交通系電子マネーを手に入れて利用するのは、使い勝手も分からず煩わしいものだった。しかし、ビザやマスターカードなど母国にてすでに利用しているクレジットカードで日本の公共交通機関を利用できれば、利便性は飛躍的に高まることになる。

こうしたなか、2025年に大阪・関西万博を控えていることもあり、大阪メトロに続き、2023年11月には、近畿日本鉄道、阪急電鉄、阪神電鉄の関西の大手私鉄3社が、2024年内にタッチ決済に対応した改札機を全駅に整備することを発表。2021年から導入を進めている南海電鉄も含めると、交通系電子マネーICOCAを擁するJR西日本を除く、関西の主要な私鉄や地下鉄に「タッチ決済乗車」が導入されることになる。

写真=共同通信社
JR西九条駅で行われた大阪・関西万博をPRするイベントで、開幕まで「365日」を示すカウントダウン時計とポーズをとる公式キャラクター「ミャクミャク」=2024年4月13日午前、大阪市

なお、2024年5月には、熊本県内で路線バスや鉄道を運行する5つの事業者が、Suicaなど交通系電子マネーによる決済を2024年内に廃止し、クレジットカード等の「タッチ決済乗車」を導入すると発表している。元々、四国や東北の一部などで交通系電子マネーが利用できない地域があった。読み取り端末の設置コストや事前チャージが必要な点がネックとなり、この先も、大都市圏を除く地方においては、交通系電子マネーを廃止したり、縮小する動きが続くことも考えられよう。

東急電鉄や東京メトロが実証実験を開始

首都圏では、2024年5月、東急電鉄が、世田谷線を除く東急線全駅でタッチ決済乗車に対応した改札を設置、後払い乗車サービスの実証実験を開始している。他にも、東京メトロ、西武鉄道などで、タッチ決済乗車の実証実験の開始が発表されている。

もっとも、首都圏では、JRだけでなく多くの私鉄や地下鉄が、相互乗り入れをしており、他社線への乗り換えも頻繁にある。SuicaやPASMOでは、JRや私鉄、地下鉄の乗り換えを1枚のICカードやスマホでできても、タッチ決済乗車では対応できていないのだ。

こうしたなか、2024年5月、京浜急行と都営地下鉄は、三井住友カードやビザ・ワールドワイド・ジャパンなどとともに、羽田空港と都心間において、首都圏で初となる「タッチ決済乗車の相互利用」の実証実験を2024年内に開始すると発表しており、首都圏でも相互乗り入れに対応したタッチ決済乗車は、普及していきそうだ。