2メートル21センチの強敵に苦戦したが…
そんな中、パリ五輪出場を賭け、日本は最終戦のカーボベルデ戦に臨んだわけです。相手には2メートル21センチの身長を誇り、インサイドで圧倒的な存在感でゴールを守るエディ・タバレス選手がいました。ゴール下の守護神がいるおかげで、身長面で分が悪い日本が点を取ることは簡単ではありません。
彼のマッチアップ相手だった僕に求められたのは、彼をゴール下から引き出すこと。そう、アウトサイドでプレーし、スリーポイントの脅威を相手に見せつける必要があったのです。
試合前、それまでスリーポイントを決められていなかった僕に、トムコーチはこう言いました。
「ジョシュ、君ならできると僕はわかっている。今日も打ち続けてシュートを決めてやるんだ」
この言葉で僕は燃えました。そして試合ではなんと4本のスリーポイントを沈めることができたのです。試合後、トムコーチは半分冗談めいた口調で僕にこのように声をかけてきました。
「言っただろ、君ならやれると。でもそれだけやれるなら、最初の4試合でもやってくれよ(笑)」
チームをアジア1位に導いたコーチの問いかけ
スリーポイントの入っていない僕に対してトムコーチが「シュートを打ち続けろ」と言ってくれたことは自信を与えてくれましたし、彼からの言葉で印象に残っているもののひとつです。
もうひとつ。これは僕に対してだけのものではありませんが、トムコーチの言葉で忘れることができないのが、選手たちに対して「自分たちの目標とプレーするバスケットボールスタイルを信じていますか」という問いかけです。
ワールドカップでアジア1位のチームになってパリオリンピックへの切符を手にするという目標を定めると、僕たちを輪になって座らせ、「その目標を成し遂げられると心から信じている」とひとりひとりの口から言わせるのです。
そして大会で僕たちは実際にアジアで1位のチームとなったわけですが、僕としてはすべてが終わるまでは成し遂げたことがどれほど大きなことなのかを、本当の意味では実感できていませんでした。それ以上に、僕らが互いを信じながら、ひとつの共通の目標に向かった末にそれができたことは、かけがえのない経験となりました。